このページの本文へ

次世代太陽電池の材料を短時間で発見、自動評価装置を開発=阪大

2023年10月31日 06時44分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

大阪大学の研究チームは、通常は手動で操作する測定装置とロボットを組み合わせて、光物性、マイクロ波伝導度、光学顕微鏡像を自動で測定・評価できるシステムを独自に開発。このシステムを用いることで、有毒元素を含まない次世代太陽電池材料を短時間で探索し、電池の性能を向上させることに成功した。

大阪大学の研究チームは、通常は手動で操作する測定装置とロボットを組み合わせて、光物性、マイクロ波伝導度、光学顕微鏡像を自動で測定・評価できるシステムを独自に開発。このシステムを用いることで、有毒元素を含まない次世代太陽電池材料を短時間で探索し、電池の性能を向上させることに成功した。 研究チームは今回、太陽電池性能とよく相関する光伝導度信号を測定できる独自のマイクロ波伝導度法を、ロボットを用いた自動評価システムと組み合わせることで、次世代太陽電池材料のスクリーニングを可能にする装置を開発。太陽電池薄膜の光吸収・発光および光学顕微鏡測定もシステムに組み込むことで、多角的で迅速な評価を可能にした。 同チームはさらに、このシステムを用いてセシウム・ビスマス・アンチモン・ヨウ素(Cs-Bi-Sb-I)からなる非鉛太陽電池の性能を調査。その結果、新たに発見した材料プロセス条件で、変換効率を比較対象の6倍に向上できることがわかった。変換効率自体は現在の鉛ペロブスカイト太陽電池には及ばないが、手動で約30分かかった測定を約5分に短縮でき、多くの材料やプロセスを検討できることから、より変換効率の高い材料の発見につながることが期待される。 現在、太陽電池の低価格化や軽量化を目指して、溶液塗布プロセスで作製できる次世代太陽電池の開発が世界中で進められている。ペロブスカイト太陽電池は、シリコン太陽電池に匹敵するまで変換効率が向上しているが、有毒元素である鉛を含むという課題がある。比較的低毒なビスマスやアンチモンといった元素から構成される次世代太陽電池は、溶液塗布プロセスで多くのプロセスパラメータを検討する必要があり、素子作製に多くの時間とコストがかかるため、研究開発はあまり進んでいないという。 研究論文は、米国化学会誌「JACS Au」に、2023年10月23日付けで掲載された

(中條)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ