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kintoneパートナーセレクション 第9回

脱ずっと使わされツール!そのためのカスタマイズが元営業でもできた

カスタマインで念願の営業支援システム作り直しを実現 アイホンに聞いた

2023年10月30日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: アールスリーインスティテュート

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カスタマインで念願の営業支援システムの作り直しへ

 krewSheetの導入に次いで、この連絡書のkintone化は「潮目」だったと鈴浦氏は振り返る。もともと営業本部内での利用だけを想定していたが、技術本部、生産本部、管理本部、商品企画部など他部門にも広がりを見せることになった。結果として連絡書には1000ヶ所以上のカスタマイズが行なわれ、使い勝手はどんどん向上していった。そして、いよいよ本丸の営業支援システムの刷新に移る。「もともとあった営業支援システムはカスタマインで全部作り替えました」と鈴浦氏は語る。

営業支援システムの刷新について説明する鈴浦氏

 2016年に作られた営業支援システムは、外部ベンダーの開発の結果、「kintoneの面影もない」(鈴浦氏)という見た目だった。営業本部としてやりたいことは伝えたが、どのような画面がよいかは伝えていなかった。その結果、要求とアウトプットが大きく違ったものになっていた。krewSheetを反映させた内製アプリは使いやすくなったものの、外部ベンダーが開発した営業支援システム自体は変わっていないので、設計自体を抜本的に変えていく必要があった。

 課題はいくつもあったが、1つ目のポイントは市場ごとに別れていたアプリを統合することだ。鈴浦氏は、「集合住宅向けだけでなく、戸建住宅のインターホンや病院用のナースコールも扱っているのですが、会議の時も今までは集合住宅、戸建住宅や病院といった販売先の市場ごとにアプリを切り替えなければなりませんでした。営業本部の支店・営業所の営業担当者は、市場より担当者ごとの案件の状況が見たかった」と語る。担当者ごとの活動履歴や商流を見て、次の打ち手を考えるのが従来の営業会議だが、販売先の市場ごとにアプリを使い分けて会議を進行せざるをえなかったという。

 もう1つは、イレギュラー案件を含むすべての案件に対応できるように、想定されるすべての項目を並べてしまったこと。「イレギュラーにも対応できるように項目を並べたのですが、調べてみるとイレギュラーな案件は数%しかない。『この項目使ってないじゃん』と指摘しても、営業本部からは『使うことがあるから』という答えが戻ってきてしまうので、数字で実証する必要があったんです。さらに踏み込んでヒアリングしてみると、イレギュラーなんて備考欄に書ければいいですという答えが返ってきました」(鈴浦氏)。使われている項目に絞り、あとは備考欄で吸収するというのが新システムの指針だった。

 鈴浦氏がカスタマインでリニューアルした営業支援システムは、案件と活動履歴が一望できるようになった。案件アプリから検索すると、関連する 活動履歴が表示される。「たとえば病院などの場合、フロアごとに発注が違うので、案件としては別になります。そのため、建物というグループを設け、複数の案件が所属できるようにしています」と鈴浦氏。営業支援システムとしてアイホンの営業スタイルにフィットしたものになっている。

営業支援システムでのカスタマインのカスタマイズとは?

 カスタマインによるカスタマイズとしては、まず社員名入力の省力化が挙げられる。ワークフロー等の入力欄において、ログインユーザーのアカウントを引っ張ってきて、社員名簿とひも付けて、部門や上司をルックアップで登録できるようにした。ワークフローに関しては、ほぼこのカスタマイズが入っているため、標準機能だと思っているユーザーも多いという。

kintoneでカスタマイズされた社員情報のセット

カスタマインでの社員情報セットの設定

 その他、カスタマインでは入力項目に色を付けたり、保存する際にデータにチェックをかけたり、保存の可否やワークフローの承認先を確認するダイアログを出したり、数多くのカスタマイズを施している。すでに100箇所以上のカスタマイズを実施しており、ユーザーごとの表示・非表示を多用している。「ユーザーからすると、必要な項目だけ見えればいいと思うので、不要な項目は見せないようにしています。逆にメンテナンスする立場の自分 用には、全部の項目を見せるようにするボタンを作っています(笑)」(鈴浦氏)。

確認ダイアログのカスタマイズ例

カスタマインでのダイアログの設定画面

 営業としては案件に対して活動実績を登録していくことになるが、こちらも誰に対して共有するか、ユーザー選択フィールドから選択できるようにカスタマイズした。これにより、メンション相手と案件に関してやりとりが発生するようになった。「担当者が支店長にメンションを付けて相談するようになった結果、風通しの良い支店も出てきました」(鈴浦氏)。

 もちろん、案件に関しては、ひとつのアプリで担当者別、地域別での並べ替え、絞り込みも簡単に可能になった。これによりメンバーの活動内容が見える化できた。当初、営業本部が情報システム部にリクエストしたことがカスタマインを利用することで実現できた。

 新しくなった営業支援システムはようやく営業活動に根付いてきた。「最初は目的がわからなかったので、やらされ感しかなかった。でも、この1~2年で、活動実績を登録することで、自身だけでなく他の営業担当者が行なってきた活動を、案件ごとに時系列にまとまった一覧で見えるのが支店・営業所もわかってきました」と鈴浦氏は振り返る。活動履歴のデータを溜め、有効活用していくのが今後の方向性だという。

 つい先日も「新製品の登場に伴う営業戦略とその活動をチェックしたい」という営業本部から支店・営業所へ のリクエストに対して、支店・営業所からは「日々の活動履歴を入力してきたのだから、本部こそ集計して活用してくれ」という返事が戻ってきたという。営業本部から相談を受けた鈴浦氏は、「kintone導入当初に活動履歴の登録を面倒くさがっていた支店・営業所の反応を見てきた僕からしたら、『どの口がその台詞を言うんだ』という心情ですが(笑)、内容的には項目を1つ増やすだけのことでした。」とコメントする。

 営業本部時代は、パトロールと称して朝夕にkintoneの使い方をチェックしていたという鈴浦氏。情報システム部のメンバーからは「そんなの情シスはやらんよね」とからかわれるということだが、やはり元エンドユーザーだけにツールを活用してほしいという気持ちが強い。「やっぱりユーザー自身に効果を体験してもらわないと、ずっと使わされツールになってしまいますよね」と自戒を込めて語る。

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