LE Audioの普及が始まろうとしている。その中核となるのが「LC3コーデック」だ。これを生み出したフラウンホーファー研究機構について正しく知りたいと考えた。そこでフラウンホーファー IISのナワビ・ファヒム(Nawabi Fahim)日本代表を取材した。
フラウンホーファーの親族がやっている企業ではない?
フラウンホーファーという言葉を聞いたことがある人は多いだろう。高校の物理で「フラウンホーファー線」という用語を習うからだ。約200年前にこれを発見したのがドイツの物理学者、ヨーゼフ・フラウンホーファーである。あまり日本では知られていないが、フラウンホーファーは研究者であると同時にビジネスセンスにも優れた起業家でもあった。
フラウンホーファー研究機構はドイツ経済を活性化するため、1949年に設立された組織だ。公共機関や民間の委託で研究し、その成果で利益を得ている。正しくはドイツのe.V.(登録社団)という形態を取り、日本のNPOに近い性格を有する。利益よりも公共性を重視している。この組織の形態がヨーゼフ・フラウンホーファーの理念と合致しているので彼の名を冠している。子孫が設立に携わったわけではない。
フラウンホーファー研究機構は75以上の研究所を持ち、約3万人のスタッフがいる。その多くは技術者と研究者だ。年間予算は30億ユーロ(約4689億2160万円)で、その成果は100億台近くのデバイスに入っているという。フラウンホーファーIIS(集積回路研究所)は、その研究所の中で最大で、コーデックなどの研究を行なっている。
フラウンホーファーIISの主な得意先は民間企業で、ほかにも公共プロジェクトを請け負ったり、国からの助成金を受けたりしているという。活動分野は放送、通信、環境、エネルギー、物流、人工知能、生産技術、半導体、ヘルスケアなど幅広い。
例えば、FMラジオ局の番組をインターネットにストリーミングする会社の依頼で、高音質のxHE-AAC(extended High Efficiency AAC)を開発し、そのライセンス料を受け取るといったプロジェクトがある。xHE-AACは16kbpsや24kbpsという低いビットレートでも音声や音楽を楽しめる技術である。限られたインターネットの帯域を有効に活用するため、AACよりもさらに低いビットレートのソリューションを提供しているわけだ。
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