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二酸化炭素の還元触媒の反応機構をナノスケールで解明=名大など

2023年06月28日 17時01分更新

文● MIT Technology Review Japan

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名古屋大学などの共同研究チームは、触媒表面で生じる二酸化炭素の還元反応を、電気化学的にイメージングする技術を確立。水素ガスなどの副生成物を抑え、化成品を効率的に生成するための電解合成触媒の反応メカニズムの理解に成功した。

名古屋大学などの共同研究チームは、触媒表面で生じる二酸化炭素の還元反応を、電気化学的にイメージングする技術を確立。水素ガスなどの副生成物を抑え、化成品を効率的に生成するための電解合成触媒の反応メカニズムの理解に成功した。 再生可能エネルギーを利用する電気化学的な二酸化炭素の還元は、二酸化炭素を資源として化成品を電解合成するカーボンニュートラル技術の一つとして注目されている。だが、二酸化炭素の電気化学的還元による化成品合成には、副反応として水素が発生することで、化成品の生成効率が著しく下がってしまうという課題がある。 そこで研究チームは、化成品の合成を優位に進行させるには水素発生能力が低い触媒が良いはずとの仮説を立て、触媒の幾何学構造と電気化学データを同時マッピング計測可能な走査型電気化学セル顕微鏡を開発。二酸化炭素還元反応において空間分解能を持つ電気化学イメージングを実現し、幾何学構造と電気化学応答を一対一かつ実空間で対応付けることで、2次元ナノシート材料の触媒活性サイト(反応が起こる場所)の可視化に成功した。 さらに、量子力学の基礎方程式であるシュレーディンガー方程式を近似的に解く「第一原理計算」に基づいて、触媒表面近傍の反応中間体の挙動のシミュレーションを実行し、水素発生能力と二酸化炭素還元能力の関係および、それらの触媒反応メカニズムを原子レベルで解明。水素発生能力が低い触媒設計が、電気化学的二酸化炭素還元の大きな副反応の一つである水素発生を抑える鍵であることを、直接観察と理論計算によって証明した 研究論文は、米国化学雑誌、ACSナノ(ACS Nano)に2023年6月5日付けで掲載された

(中條)

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