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新型コロナ禍で若年女性の自殺者が増加、男女の傾向に違い

2023年06月27日 10時58分更新

文● MIT Technology Review Japan

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横浜市立大学と慶應義塾大学の研究グループは、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック以降に、10〜24歳の若年女性の自殺者が増加していることを、厚生労働省のデータで確認した。

横浜市立大学と慶應義塾大学の研究グループは、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック以降に、10〜24歳の若年女性の自殺者が増加していることを、厚生労働省のデータで確認した。 研究グループは先行研究で、パンデミック発生後に20〜30代の若年女性の自殺者が顕著に増加していることを明らかにし、その理由として失業などによる経済的影響を受けやすいためと推測していた。しかし、今回の研究では、非雇用年齢である10代前半でも女性の自殺者が増加していることが明らかになり、経済的要因の他にも原因があることを示唆する結果となった。 今回の研究では、日本の厚生労働省から提供を受けた死因別死亡数のデータのうち、2012年7月〜2022年6月までの10年間のデータを分析した。このデータは死亡診断書に基づくものであり、日本国内のすべての死亡者を対象としている。対象期間の10年間で、男性9428名、女性3835名が自殺とされている。 分析では、男女別に10〜14歳、15〜19歳、20〜24歳の3種類の年齢層を設定し、それぞれ6カ月ごとの自殺者数を数えた。その結果、男性はパンデミック前後で自殺者数に有意な変化はなかったが、女性の自殺者はパンデミック後に有意に増加していた。これは先述の3種類の年齢層すべてに共通するという。 結果について研究グループは、男性に比べて女性の方が周囲の人との関係を大切にする点を挙げ、パンデミックによって他者との接触が減少したことによって精神的影響を受けている可能性があると推測している。さらに、女性は家庭内暴力や虐待の対象になりやすいため、パンデミックによって自宅滞在期間が長くなり、家庭内暴力や虐待の影響が顕在化した可能性もあるとしている。 研究成果は6月22日、ランセット精神医学(Lancet Psychiatry)誌にオンライン掲載された。研究グループは10代、20代の自殺を防ぐには、感染対策や経済対策だけでは不十分であり、男女でそれぞれ異なる対策が新たに必要だと指摘している。

(笹田)

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