このページの本文へ

同じ失敗を繰り返さないための脳内メカニズムを解明=阪大

2023年05月03日 08時57分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

大阪大学の研究チームは、脳の側坐核に存在するドーパミンD2受容体発現ニューロンの活性化が同じ失敗を繰り返さないために必要であることを初めて発見。失敗の経験がどのように脳内にフィードバックされ、同じ失敗を繰り返さなくなる(行動抑制する)のか、仕組みを解明した。

大阪大学の研究チームは、脳の側坐核に存在するドーパミンD2受容体発現ニューロンの活性化が同じ失敗を繰り返さないために必要であることを初めて発見。失敗の経験がどのように脳内にフィードバックされ、同じ失敗を繰り返さなくなる(行動抑制する)のか、仕組みを解明した。 研究チームはまず、失敗につながる行動を積極的に抑制する必要がある認知行動課題を新たに開発し、マウスがこのような高度な戦略を学習することが可能であることを確認した。次に、遺伝学的手法を用いて、側坐核のドーパミンD1受容体およびD2受容体発現ニューロン(以下D1ニューロン、D2ニューロン)を区別し、小型顕微鏡を用いて1細胞レベルでのカルシウムイメージングを実行。大多数のD2ニューロンは失敗(無報酬)を経験した直後に、すばやく活性化することを見い出した。 さらに、光遺伝学を用いて、D2ニューロンの失敗直後の活性化を阻害すると、同じ失敗を再びしてしまうようになることを発見。失敗直後のD2ニューロンの活性化が同じ失敗を繰り返さないために必要であることも明らかにした。 動物が最適な行動を選択するには、成功につながった行動を積極的に実行するだけでなく、同じ失敗をいかに繰り返さないようにするかが重要となる。しかし、従来の研究では、主に成功につながった行動を促進するメカニズムに注目しており、失敗につながった行動をどのように抑制しているのか詳細な脳内メカニズムは不明だった。今回の研究成果は、米国科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に、2023年4月21日付けで公開された

(中條)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ