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東大が光がん治療で新手法、赤色光でがん細胞をピンポイント攻撃

2022年09月23日 16時46分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学の研究チームは、赤色パルスレーザー光が当たったときのみ、薬剤を放出してがん細胞を攻撃する物質「有機金属フタロシアニン」を使った光がん治療法を考案した。

東京大学の研究チームは、赤色パルスレーザー光が当たったときのみ、薬剤を放出してがん細胞を攻撃する物質「有機金属フタロシアニン」を使った光がん治療法を考案した。 従来の光がん治療法では、光エネルギーで活性酸素を発生させ、がん細胞を攻撃する。標的となるがん細胞のアポトーシス(あらかじめ予定されている細胞死)を誘導しにくく、腫瘍組織の低酸素領域では治療効果が低い点が課題だった。そこで研究チームは、赤色光を吸収するフタロシアニンに、アルキル基を有する有機金属錯体を組み合わせた「有機金属フタロシアニン」を開発。これを使用した治療法の原理を考案した。 有機金属フタロシアニンは室内光下では安定しているが、赤色パルスレーザー光を当てるとさまざまな生体分子と反応し、アポトーシスを誘導するアルキルラジカルやアルデヒドなどの薬剤を放出する。アルキルラジカルの生成は酸素濃度に関係なく進行し、周辺の正常細胞にダメージを与えにくいことから、新しい光がん治療法として期待できる。また、有機金属錯体のアルキル基にさまざまな薬剤を導入することが可能で、薬物送達システムとしての応用が期待できるという。 研究成果は9月20日、ケミカル・コミュニケーションズ(Chemical Communications)誌にオンライン掲載された。

(笹田)

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