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産総研とNTTが世界初、低遅延で低消費電力の光AI基本技術を実証

2022年07月05日 06時35分更新

文● MIT Technology Review Japan

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産業技術総合研究所と日本電信電話(NTT)の共同研究チームは、シリコン光集積回路だけを使った超低遅延かつ消費電力の少ないニューラル・ネットワーク演算技術を開発。演算方式を検証するための光集積回路をシリコン・フォトニクス技術により製作し、光集積回路のみによるニューラル・ネットワーク演算を世界で初めて実証した。

産業技術総合研究所と日本電信電話(NTT)の共同研究チームは、シリコン光集積回路だけを使った超低遅延かつ消費電力の少ないニューラル・ネットワーク演算技術を開発。演算方式を検証するための光集積回路をシリコン・フォトニクス技術により製作し、光集積回路のみによるニューラル・ネットワーク演算を世界で初めて実証した。 今回開発したのは、光集積回路を用いて機械学習の演算を実行する技術である。解析すべき多次元データの電気信号を光集積回路のそれぞれ異なる入力ポートに入力すると、光信号に変換され、光集積回路に組み込まれた多数の光干渉計を通過する際に演算が実行される仕組みで、演算結果は、複数の出力ポートの光強度分布として出力される。 研究チームは、光干渉計デバイスの駆動電圧に対する非線形性を用いるために、非線形写像型のニューラルネット演算方式を提案。データ入力部の光干渉計デバイスにより、解析すべきデータを高次元光複素振幅空間に非線形写像し、さらに多数の光干渉計から構成される光集積回路に光伝搬させることで演算結果を得られるようにした。 光集積回路に光を伝搬させるだけで演算が完了するため、デジタル電子回路のような逐次スイッチングが不要となり、電子回路の1000分の1以下の遅延時間、かつ数十分の1の消費電力での演算が可能となる。光回路では電子回路の10倍以上の高速なクロックが適用できるため、単位時間あたりのデータ処理量も大きくできる。デジタル電子回路を補完するAIアクセラレーターへの応用が期待されるという。 研究成果は、ネイチャー・コミュニケーション(Nature Communications)誌に2022年6月30日付けで掲載された

(中條)

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