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OS標準搭載のウイルス対策機能に追加して強固なセキュリティを、1ユーザーあたり月額330円

日本MS、中堅中小向けセキュリティ「Microsoft Defender for Business」発売

2022年06月02日 07時30分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフトは2022年6月1日、中堅中小企業向けセキュリティツール「Microsoft Defender for Business」を5月に提供開始したことを発表した。「Microsoft 365 Business Premium」に含まれるエンドポイントセキュリティソリューションを単体製品として提供するもので、価格も月額330円(税別、1ユーザー)と抑えている。

「Microsoft Defender for Business」は、最大300人規模の組織向けに設計されたエンドポイントセキュリティツール

日本マイクロソフト執行役員 常務 コーポレートソリューション本部長 兼 デジタルセールス事業本部長の三上智子氏

中堅中小企業の最大のリスクは「サイバー攻撃に気づかないこと」

 同日の記者発表会で、日本マイクロソフト執行役員 常務 コーポレートソリューション本部長 兼 デジタルセールス事業本部長の三上智子氏は、サイバー攻撃が中堅中小企業にとって他人事ではなくなっている現状から説明した。

 三上氏は「標的型のサイバー攻撃がどんどん増えており、ランサムウェアの攻撃はこの1年で150%、フィッシング攻撃は667%増加している」と説明する。対策を怠った際のリスクも高く、想定損害額が5000万円を超えるケースも確認されているという。

 中堅中小企業にとって無視できないセキュリティのトレンドが、「サプライチェーン攻撃」だ。強固なセキュリティ対策を講じている大企業ではなく、対策が甘い中小企業を攻撃し、そこを“侵入口”として最終的に大企業に攻撃を仕掛けるというものだ。日本でも、先に自動車業界でサプライチェーン攻撃が発生したことが記憶に新しい。

 三上氏は「中堅中小企業も被害者だが、攻撃側に回ってしまうリスクがある」と述べたうえで、これに加えて今年4月から施行された「改正個人情報保護法」により、中堅中小企業も責任を求められるようになったことを紹介する。

 動画でコメントを寄せた神戸大学大学院の森井昌克教授は、サプライチェーン攻撃などのトレンドを紹介しながら、「中堅中小企業の最大の問題点は、サイバー攻撃に気がつかないこと」だと指摘する。「ある日突然、一斉に発症して大きな被害に遭うことがありうる」と森井氏は述べたうえで、重要なのは対策をとり、仮に被害にあったとしても攻撃をいち早く発見して、容易に復旧できるようにすることだとアドバイスした。

中小企業は大企業よりセキュリティ対策ができている割合が18ポイント低い(左)など、サイバーセキュリティ対策が後手に回っているという

 一方で、中堅中小企業側はリソース、ITリテラシー、コストなどの課題を抱えている。Microsoft Defender for Businessには、そのような中堅中小企業におけるセキュリティ対策の課題解決を支援する狙いがある。

マルウェアの侵入前から侵入後までの対策をとることができる

 同製品は、大企業向けのMicrosoft 365 Business Premiumに含まれていたエンドポイントセキュリティツールだ。単体販売にすることで価格を抑え、必要な時に購入できるようにした。Microsoft社内でも使っており、「大企業向けのセキュリティ機能と同等のもの」だと説明する。

 具体的な機能としては、脅威と脆弱性の管理、アラート検出と対処、アタックサーフェスの縮小、自動調査と修復、次世代の保護、と大きく5つがあり、ウィザード形式の設定など使いやすさも特徴とする。企業がさらされている優先順位の高いリスクに対応することができるという。デバイスとアプリケーションをまたいだランサムウェア対策なども備える。

 MicrosoftではWindows OSにもウイルス対策ソフトを組み込んでいるが、ここにMicrosoft Defender for Businessを組み合わせることで、マルウェアの侵入前から侵入後までの対策をとることができるという。価格は1ユーザー月額330円から(税別)で、30日間の無料試用も可能だ。

 三上氏によると、IDCの調査では中堅中小規模企業のセキュリティ分野で、Microsoftは「リーダー」評価を獲得している。

 提供にあたっては、10社の協賛パートナーを通じて、ソリューションとして提供するという。「ソフトウェアだけではなく、パートナー様のサービスも組み合わせることでお客様の対策がより強固になる」と三上氏は述べた。

Microsoft Defender for Businessの提供にあたり、10社のパートナーと協業する

 合わせて、Microsoftと顧客が直接つながる窓口として、「Microsoft Base」と「ITよろず相談センター」も活用する。Microsoft Baseはクラウド化やDX支援のための物理拠点であり、現在は全国17拠点に展開している。リアルでのコミュニケーションが増えていることもあり、2023年6月までに47都道府県を網羅する計画だ。一方、ITよろず相談センターは2021年4月に開設した電話によるサポートサービスで、開設から1年で約2万社の顧客と直接つながり、対話ができたという。

 三上氏は、国内企業の99.7%を占める中堅中小企業領域で「デジタル化が進み、生産性が上がり、“稼ぎ方改革”ができることは、日本を元気にするという点でも大きな要になると信じている。しっかりお客様に寄り添って活動を進めたい」と意気込みを見せた。

 発表会ではあわせて、1年前に発表した中堅中小企業向けの取り組みの進捗についても説明した。

 マイクロソフトは、1)ハイブリッドワークの推進、2)ビジネスプロセスのデジタル化、3)スタートアップ企業と連携したインダストリーDX」の3つの柱で進めてきた(今回のMicrosoft Defender for Business発売に伴い、4つ目として「セキュリティ」が加わる)。

 このうちクラウドへのシフトについては、2021年は前年から22ポイント増加し、2022年も11ポイント増加しているとのこと。ただし「ほぼクラウドがデフォルトになった」東京に対し、地方のクラウドシフトはまだそこまでではなく、両者の間には25ポイントもの差があることも三上氏は指摘している。

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