親なら知っておきたい人気スマホアプリの裏側と安全設定 第123回
若者は電話よりもSNSのほうが身近だが……
いじめ・自殺防止の相談SNS、自治体の9割が「予定もない」
2021年07月06日 09時00分更新
電話よりもSNSのほうが相談しやすい?
若者の自殺増やいじめ問題などが社会問題となっている。悩みを打ち明ける相談事業が求められるなか、若者が利用しづらい電話ではなく、SNSを使った相談が脚光を浴びている。
女子高生にヒアリングしてみると、「知らない人が出る電話は無理。よっぽどのことがないとかけかけられないと思う。でも、SNSならちょっとしたことでも相談できるかも」との答えが返ってきた。
SNSを使った相談事業はNPOや各種機関だけでなく、自治体も徐々に増えているが、課題も多いようだ。実態や長所、課題はどうなっているのか。全国都道府県および市町村を対象とした内閣府の「SNSを活用した相談事業の調査」(令和2年3月)を見てみよう。
予算も人も不足、スキルもない実態
自治体で子どもや若者を対象にSNSを使った相談を実施しているか聞いたところ、「実施しておらず、今後の予定もない」が91.3%と最多に。
一方、「外部に委託して実施している」(2.6%)、「実施していないが、今後、直営での実施を検討している」(1.3%)、「実施していないが、今後、外部委託での実施を検討している」(0.9%)など、計6.4%が実施しているか今後の予定があるという。全体としては実施はまだまだ少数派のようだ。
利用しているSNSは「LINE」が62.2%で最多であり、その他「Twitter」(2.7%)、「Facebook」(2.7%)などとなった。モバイル社会研究所の調査によるとLINEの利用率は他のSNSより高く、10~30代で9割以上だ。普段から使い慣れており、外部から検索もできず、やり取り相手しかメッセージを読むことができない安心感がある点が支持されていると考えられる。
SNS相談については、「来所や電話に比べて相談しやすい」(86.5%)、「相談者が自己開示しやすい」(48.6%)、「外部に委託することで専門性の高い相談が可能」(31.1%)などの長所を感じる一方で、「対面や電話と比較して得られる情報の量が少ない」(56.8%)、「相談者の状況や真意の把握に時間がかかる」(45.6%)、「システム等導入のための予算を確保する必要がある」(45.9%)などの課題もあるようだ。
また実施の予定がないところは、「相談員の負担が増える」(73.4%)、「SNS相談システムに関する費用や予算の確保が必要となる」(70.3%)、「相談員のSNSスキル(スマホやパソコン操作のスキルも含む)が十分でない」(53.1%)、「個人情報や守秘義務、通報についての不安がある」(50.0%)などを懸念している。
様々な課題があり、なかなか実施が難しい実態があるようだ。自治体では実施していなくても、NPO団体など居住地に関係なく相談に乗ってくれるところもある。ぜひ近くの子どもにこのような相談機関の存在を伝えてあげてほしい。
著者紹介:高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、監修、講演などを 手がける。SNSや情報リテラシー教育に詳しい。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『Twitter広告運用ガイド』(翔泳社)、『できるゼロからはじめるLINE超入門』(インプレス)など著作多数。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディア出演も多い。公式サイトはhttp://akiakatsuki.com/、Twitterアカウントは@akiakatsuki
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