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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第124回

スーパーシティ、自治体に温度差「メリット見いだせない」「デジタル化の前に構造改革を」の声も

2021年04月26日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 IT技術を軸に地域の課題解決を目指すスーパーシティの公募に対して、全国の31自治体(複数の市町村による共同提案も含む)が応募した。

 内閣府が2021年4月20日、応募した市町村のリストを公表した。

 同日付の日本経済新聞は、今後政府が夏までをめどに5ヵ所程度を指定すると報じている。

 人口減少が進む市町村では、「まるごと未来都市」を目指すスーパーシティ構想に対する期待感は高い。

 一方で、応募を検討していたものの、今回の応募を見送った自治体もあった。「現時点でメリットが見いだせない」といった声も出ている。

●背景に人口減少

 静岡県浜松市は、スーパーシティに応募した自治体のひとつだ。

 人口約79万7000人(4月1日現在)。2005年に旧浜松市を含む12市町村が合併して、政令指定都市になった。大規模な市町村合併で生まれただけあって、市の面積は全国で2番目に広いが、およそ5割が過疎地域にあたる。

 市の担当者は「浜松は、日本の国土全体を凝縮したようなところがあります」と話す。

 市街地、住宅地が広がる郊外、山や森が広がる地域など、同じ市内であっても地域ごとに抱える課題には幅がある。

 多くの地域で、少子高齢化にともない人口が減っている。人口が減少すれば、市町村の税収も減っていく。

 そうなれば、老朽化したインフラを更新する予算の確保は難しくなり、住民サービスの質が低下しかねない。

 スーパーシティを含む地方のデジタル化に関連する政策の背景には、「持続可能な都市経営を進めていくうえでは、デジタルを最大限活用する必要がある」(浜松市)という市町村の現状がある。

●デジタル化の前に構造改革

 浜松市が内閣府に提出したスーパーシティ構想には、「次世代交通システム」が含まれる。

 バス停から遠く離れた地域で暮らすお年寄りの中には、スーパーや病院に出かける交通手段がない人もいる。

 市内のNPOが車で送り迎えをする「お出かけ支援」を実施しているが、広大な市域をNPOの支援だけではカバーしきれない。

 そこで、市が現在進めているのは、極めてアナログな作業だ。

 子どもたちを送り迎えするスクールバスには、お年寄りは乗ることができない。

 「知らない人を乗せるのは危ない」といった理由はあるが、実際には、浜松市内の地域に行けばほとんどの人が互いの顔を知っている。

 ならば、スクールバスもお年寄りの買い物の足として使えるのではないか、というアイデアが生まれてきた。

 学校の担当は学校だけを見て、高齢者の担当は高齢者だけを見ているといった縦割りを乗り越える取り組みでもある。

 さらに、住民が個人の車でお年寄りを送迎するという取り組みもありえるが、これには、先行してビジネスを行っているタクシー会社はバス会社との調整なども必須になる。

 縦割りを壊す取り組みが一段落してはじめて、配車アプリなどデジタル技術の出番がやってくる。

 浜松市の担当者は「デジタル化は、人口減少が進む中で、地域がどう生き抜いていくかという課題そのものです。デジタルを入れる前に、まずは人口減少で生じた構造的な課題の改革を進めないことには、デジタルは機能しない」と指摘する。

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