就職情報サイト「リクナビ」を運営しているリクルートキャリアが、7983人の同意を得ずに、内定を辞退する確率を予測し企業に販売していた。
リクルートキャリアは2019年8月5日にサービスの廃止を発表。個人情報保護委員会は、個人情報保護法に違反する疑いもあるとみて、同社の関係者から事情を聞くなど調査を始めた。
●「スコア」ビジネスに影落とす
同社が販売していたのは、リクナビの閲覧履歴を基に、就活生が内定を辞退する確率を予測した分析スコアだ。
ウェブ上に記録された行動、買い物などのデータを基に、個人にスコアをつけるサービスは日本国内でも、さまざまな分野で広がりつつある。
政府は、一定のルールのもとでデータ自由流通に流通させる概念「DFFT」(Data Free Flow with Trust)を提唱している。
しかし、データの活用を進める大手企業を代表する存在であるリクルートグループが、学生の将来に影響しうる情報を無断で販売していた事実は、極めて深刻だ。
●内定辞退防ぐサービスがきっかけ
リクルートキャリアの発表によれば、同社は内定辞退の確率を予測するサービスを2018年3月に始めた。
背景には、いったん採用が内定したものの、辞退する学生が増加していることから、メールや電話で、採用担当者らが内定者にフォローをしている現状がある。
内定辞退の確率が高い学生であれば、こまめにフォローして、辞退を防ぐ――。企業側のこうしたニーズに答えるサービスだった。
リクルートキャリアは、サービスの停止までに、学生が知らないうちに38社に対して分析スコアを提供していた。
「テクノロジーを駆使し、人材マッチング事業全体でイノベーションを創出」とするリクルートグループ全体の方針にも重なる。
新卒の学生を採用する企業側の立場で考えてみると、「辞退率が高い学生には、内定を出さなければいい」ということになるが、一応、リクルートキャリア側は「合否の判定には当該データを活用しない」との同意書を取っていたという。
●同意確認「一部の画面」で反映されず
リクナビを利用する際に、ユーザーは、プライバシーポリシーに同意するかどうかを確認を求められる。プライバシーポリシーには、本人の同意なく個人情報を第三者に提供しないと明記されている。
個人情報保護委員会が公開している「個人情報保護法ガイドライン」でも、サイトに表示されるチェックボックスへのチェックや、ボタンのクリックでも、本人の同意を得たとみなすことができるという。
リクナビでも複数の画面で同意を求める設計だったが、リクルートキャリアは「一部の画面においてその反映ができていなかった」としている。
●業界標準になっていることも問題
問題は、リクナビを含む数社のサイトが新卒採用のデファクト・スタンダードになっている点だ。
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