今回のことば
「AIはブラックボックス化されており、第三者による検証ができない。医療や自動運転など、人の命が関わる領域で、すべてをAIに委ねることは怖いことだ」(富士通・山本正已代表取締役会長)
CEATEC JAPAN 2016の初日となる2016年10月4日、主催団体のひとつである一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)の会長を務める富士通の山本正已代表取締役会長による基調講演のテーマは「IoTがもたらす豊かな未来に向けて」だった。
今年で17回目を迎えるCEATEC JAPAN 2016は、昨年までの「IT・エレクトロニクスの総合展示会」から、「CPS/IoT Exhibition」へと展示内容を大きく変更。「つながる社会、共創する未来」をテーマに開催。過去最低だった昨年を上回る648社/団体が出展した。
展示会場や基調講演や137にのぼる各種カンファレンスも、CPSやIoTのほか、AI(人工知能)、ロボット、次世代ネットワークなどの最新技術トレンドを捉えたものになった。
IoTは暮らしを変えはじめた
山本会長は基調講演の冒頭にIoTの現状について説明。「IoTはすでに様々な領域で利用されており、ビジネスや暮らしを変え始めている」と発言。具体的な事例として、インドネシアでのスマホの位置情報を利用した渋滞対策や、日本の植物工場における安定的な栽培の実現例のほか、アイルランドでの医療分野においてはスマホで測定したバイタルデータをリハビリに用いている例などを紹介。
さらに2035年には、取り巻く技術が進化することで生活が大きく変化。自動翻訳機能は単に言葉を翻訳するだけでなく、それぞれの国の文化などを考慮して自然なやりとりができるようになるほか、会議ではAIがファシリテータを務めて、専門家や関連データを駆使。結論を導くようになると予測した。
また、健康に関しては、体内に入ったナノロボットとAIが連動。個人の健康をリアルタイムで管理して、適切なアドバイスができるようになるという。その結果、健康寿命が伸び、AIやロボットの普及によって増えた余暇を楽しんだり、退職後にも社会参加できるように、継続的なキャリア教育を受けられる環境がテクノロジーによってサポートされる時代が訪れることを示した。
「こうした社会は、テクノロジーロードマップから見ても十分実現が可能である」とし、「IoTは豊かな社会をもたらす力がある」とした。実は、この2035年の世界の姿は、同年創立100周年を迎える富士通の社員16万人を対象に行なったジャムセッションによって導き出した未来の姿だという。
だがその一方で、IoTが持つ課題があることにも言及する。
センシング精度の向上や、電力供給の課題、リアルタイム処理の高度化、ネットワークの高速化などを、IoTの今後の課題として指摘。これらの課題を解決するために昼夜の温度差を利用した環境発電の導入や、エッジコンピューティングの活用、2020年に国際規格が決定すると見られる5Gの採用が必須であることなどを示した。
5Gについては「4Gの1000倍の容量を持つ5Gは、東京オリンピックをにらんで世界に先駆けて実用化し、日本が世界的な標準化をリードする必要がある」と述べた。
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