今回のことば
「利益至上主義は悪いことではない。だが、利益が捻出される過程で、不適切な会計処理があってはならない。大前提は適正かつ厳正な会計処理。それがずれていた」(東芝・田中久雄前社長)
歴代3社長辞任の異例の事態に
東芝の不適切会計処理問題は、西田厚聰氏相談役、佐々木則夫取締役副会長、そして、田中久雄社長という、歴代3社長が辞任するという異例の事態を引き起こした。
また、取締役代表執行役副社長の下光秀二郎氏、取締役代表執行役副社長の深串方彦氏、取締役代表執行役副社長の小林清志氏、取締役代表執行役副社長の真崎俊雄氏、取締役監査委員会委員長の久保誠氏がすべての役職を辞任。取締役代表執行役専務の前田恵造氏が取締役代表執行役の役職を辞任する格好となり、8人の取締役が辞任することにもなった。
7月21日付で社長を退いた田中久雄氏は、同日行われた記者会見で、「本件に関わる重大な責任は、私をはじめとする経営陣にある。第三者委員会からの指摘を厳粛に受け止め、その経営責任を明らかにするため、本日をもって取締役と代表執行役社長を辞任する」と発表した。
内部告発かどうかは答えられない
東芝の不適切な会計処理が明るみに出たのは、2015年2月、証券取引等監視委員会から、報告命令を受け、工事進行基準案件などについて開示検査を受けたことが発端だった。
これが内部告発によるものであったかどうかは、会見の席上でも、「その点には答えられない」と、7月22日から暫定的に社長に就任した室町正志会長が回答したが、東芝では、特別調査委員会を設置し、事実関係を調査。一部のインフラ関連の工事進行基準において、工事原価総額が過小に見積もられ、工事損失が適時に計上されていないことが判明した。
さらにこのとき、インフラ関連の工事進行基準以外にも、調査を必要とする事項があることが判明。東芝では、日本弁護士連合会が定めるガイドラインに準拠した形で、東芝とは利害関係を持たない中立、公正な外部の専門家で構成される第三者委員会を設置。内部調査を継続的に実施した。
ここでは、「工事進行基準案件にかかる会計処理」のほか、「映像事業における経費計上に係る会計処理」、「ディスクリート、システムLSIを主とする半導体事業における在庫の評価に係る会計処理」、「パソコン事業における部品取引などに係る会計処理」の4点が対象となった。
その結果、それらの事業において、不適切な会計処理が行われていたことが判明。7月20日に公開された294ページに及ぶ調査報告書では、2008~2014年度第3四半期(2014年10~12月)に、売上高で149億円、税引前損益で1518億円の修正が必要であること、これらの不適切な会計処理においては、経営幹部の関与し、組織的に実行されたものであると認定した。
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