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Windows Info 第43回

今夏登場予定のWindows 10の出荷スケジュール

2015年04月10日 12時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII.jp

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Windows 10の出荷は夏に決定

 Windows 10の出荷(Launch)は今年の「夏」だという。当初は「秋」とされており、これまでのWindows 7や8のようなスケジュールではないかと予想されていた。

 そもそも、これまでのWindowsでは、開発の途中に以下のような「マイルストーン」(プロジェクト管理で進行状況や段階を示すための地点。あらかじめ定めた作業が終了するとマイルストーンに到達し、次の段階に進むことを示す)があることが知られていた。

・一部の開発者向けのプライベートベータ版の配布開始
・一般ユーザーをも含むパブリックベータ版の配布開始
・最終仕様がほぼ固まった段階のリリース候補版(Release Candidate。RC)の配布開始
・完成(Release To Manufacturing。RTM)
・出荷(General Availability。GA。対外的にはLaunchとも言う)

 このうちRTMからGAまでは約3ヵ月。RC(場合によっては複数出ることがある)からRTMまでは、2ヵ月程度となるのが通常のスケジュールだった。

これまでのWindowsの出荷までのイベント(マイルストーン)とスケジュール

 RTMからGAまでの約3ヵ月は、RTMを元にハードウェアメーカーが自社製品向けの最終検証を行ない、プリインストールしたPCを製造して出荷するまで、および、マイクロソフトがDVDなどのスタンプを行い、大量のパッケージを製造するのに必要な時間として取られていたものだ。

Windowsの製品パッケージやプレインストールマシンを市場に出すためにはどうしても2~3ヵ月程度の時間が必要だった

 ただし、MSDNやTechNetなどのサブスクライバー向けには、RTMの直後、1週間程度で完成版のISOイメージの配布(最近ではウェブからのダウンロードだが、以前は物理メディアを配布していた)があった。これは、Windowsが市場に出る前に製品版によるソフトウェア検証などのために用意されたものだ。

 ある意味、Windows 8までは、こうした「物」としての配布が優先されており、そのための製造時間などを考慮してGAが設定されていた。しかし、Windows 8.1では、Windowsストアによる配布に変わり、8.1 UpdateではWindows Updateを使った配布が行われた。

 また、現在行なわれているWindows 10のテクニカルプレビューでは、最初はISOイメージをダウンロードする必要があるが、高速なインターネットが普及した現在、単にファイルを公開するだけだ。

 しかも、マイクロソフトは、自社のAzureを使えば、世界中からのアクセスに対応可能なサービスを簡単に立ち上げられる。また、テクニカルプレビューは、一回インストールされると、あとはWindows Updateで更新されていく。

 Windowsは、これまで「物」として流通してきたが、Windows 10では形のない「バイナリ」として配布されるものに変わる。DSP版を含め、インストールディスクを含むパッケージは作られないだろう。

 自作マシンなど新規のハードウェアに関しては、アクティベーションキーのみが販売され、インストールイメージはインターネットからダウンロードして入手することになるはずだ。最近では、コンビニに行くと各種のオンラインサービス向けのプリペイドカードが多数販売されているが、最終的には、あのような感じでのアクティベーションキーの販売のみになるのではないかと考えられる。

ではWindows 10のリリーススケジュールはどうなる?

 「物」から「バイナリ」へとWindowsが変化して、そのために大きく変わる可能性があるのが、RTM以後のスケジュールだ。技術的にはRTMですぐに配布を開始できる。

 ただし、ハードウェアであるPCでは、PCメーカーがRTMと自社のドライバや添付アプリを使った最終検証を行ない、プレインストール作業などがどうしても必要になる。このため、どうしても出荷までに「月単位」「週単位」の時間がかかってしまう。

 また、既存機種のアップデートは、Windows Updateやインストールディスクで行なわれるが、この場合も、メーカーのバージョンアップ推奨機種では、なんらかの検証が必要になる。もちろん、結果的に現行の8.1などにインストールされているアプリやドライバがそのまま利用できる可能性はあるが、それでもメーカーとしては検証する必要があり、自社ウェブサイトには、アップグレードで問題がないなど検証結果を公開する必要もある。

 これらも、原則RTMをマイクロソフトから受け取って検証を行わないと最終結論を出せない。もっともこの問題については、問題が発生しなければ、テストの実行時間のみで済むため、対応機種数などにも依存するが数日以内に対応が可能だろう。

 つまりこのRTMからGAまでの時間をどう設定するかはマイクロソフト次第なのである。ただ、マイクロソフトの外部からは、RTMが見えるわけではなく、マイクロソフトがどう表現するかということになる。

今回RTMとGAをどう設定するかは今のところハッキリとしていないが、技術的にはRTM後にすぐアップグレードやインストールディスクを配布開始することは可能

 対外的には、社内でいうGAのタイミングをRTMとして発表して、GAとRTMが同時だということもできるし、RTMとGAは別として個別の日を設定して発表を行なうことも可能であり、マイクロソフトがマーケッティング的にこうしたイベントをどう考えるのか次第である。

 ただ、RTMとGAを別タイミングして発表する場合、その時差により、PCメーカーを優先したのか、既存ユーザーを優先したのかがハッキリと見えてしまう。ソフトウェア開発の常として、最終段階でも致命的なバグが見つかる可能性はあり、直前にならないと、RTMのタイミングを発表することは難しい。

 Windows 8のとき、RTMのタイミングが明確になったのは、ほぼ1ヵ月前の7月9日のことである。このときは「8月の第一週」として発表が行われたが、実際には8月1日がRTMだった。少なくとも、マイクロソフトは、実際には日付を確定した計画を持っているものの、「何かあったとき」のための余裕が持てるような表現でしかタイミングを発表しない。

 これまではパッケージの製造やメーカーでのプリインストール作業が開始されるため、RTM以後は何かあったとしてもすべてWindows Updateでの対応にならざるを得なかった。このため、RTM以後のマイルストーンであるGAは、正確に日付を発表している。

 一般にソフトウェアのプロジェクト管理では、検証やベータテストなどで発見される不具合の頻度から、完成日(致命的な問題が修正され、不具合の発見頻度が一定数以下になる状態)を予測することが行われる。マイクロソフトは、テクニカルプレビューを動かしている世界中のマシンから、エラーの自動報告を受け取っており、テクニカルプレビューでは、操作したときにそれに関するアンケートなどがリアルタイムに行なわれている。今回、出荷が夏という発表が行われたのは、開発がかなり進行しており、主要部分はほぼ完成に近い状態だと考えられる。

 今回、もし7月にRTMだとすると、それをマイクロソフトがはっきりとさせるのは6月であり、タイミング的には、台湾で開催されるComputex、もしくは5月にマイクロソフトが開催予定のBuildコンファレンスという可能性もあるだろう。また、このタイミングでGAについても言及があるはずだ。

 また、エディションなどについては、4月には発表が行なわれるのではないかと考えられる。Windows 8の場合はRTMが8月1日で、エディションに関する発表は、2012年4月16日(米国時間)に行われている。おそらくこの時点で、既存のWindows 7、8のエディションとWindows 10のエディションのアップグレード関係もはっきりすると考えられる。

 なお、Windows 10からは、従来のWindows Phoneも「Windows 10」となる。正式名称は発表されておらず、2月に米国で開催された説明会では「Windows 10 Phones and Tablets」 などと表記されていた。インターネットなどでは、名称としては「Windows 10 Mobile」というものと、「Windows Mobile 10」という2つの表記が見つかる。

 ただ、3月に中国で開催されたWinHECのプレゼンテーション資料には両方の表記があるものの、「Windows 10 Mobile」としているものは5本あるのに対して、「Windows Mobile 10」と表記しているプレゼンテーション資料は3本しかなく、そのうちの2本は同じセッションの英語と中国語のもの。かつ、「Windows 10 Mobile」という表記も混在している。つまり、Windows Mobile 10としか表記していないセッションは1つしかない。おそらくは、「Windows 10 Mobile」が正しい表記ではないかと考えられる。


(次ページでは、「Windows 10のアップデートパスは?」)

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