かつてIBMはタイプライターさえ作るハード屋だった 今ではアマゾンの隣でSoftLayer、Bluemixを売るクラウド屋だ
2014年12月21日 07時00分更新
IBMがハード屋だったのは昔の話だ(写真はIBMの電動タイプライター「IBM Selectric typewriter」) 写真:steve lodefink
IBMがクラウドに本気を出している、という話を聞いた。
IBMといえば企業向けにサーバーコンピュータを売り、保守・運用で稼いできたハード屋だ。電動タイプライターやパソコンで時代を作ったこともある。だが同社ハード部門は減収傾向にあり、2014年第3四半期時点の部門売上は約24億ドル(約2868億)、前年同期比で15%も減少した。
IBMは昨年7月、クラウドサービスのSoftLayerを買収、ハードでなくサービス基盤を売るクラウド市場に本格参入した。同業界の支配的プレーヤーであるアマゾンを初め、マイクロソフト、グーグルなど先行大手に対抗する形でサービスを始めたのだ。積極的な参入というより、需要の高まりを受け、利益の幅を縮めてでも成長分野のクラウドに賭ける他なくなった、という構図だ。
業界最後発となったIBMの中で、関係者をして「社運をかけた」と言わせるのがクラウドアプリ開発基盤「Bluemix」。今年6月に正式開始した、開発会社がアプリを開発するときに使うプラットホームだ。すでに北米で1万社近くが導入しており、強みは大きく3つある。
1点目はオープンソースの取り込みだ。IBM自社開発のみならず、プラットホーム上で使えるサービスやツールなどを増やしていく仕組みを設けており、たとえばオープンソースの自動化管理ツール「Docker」などにも対応させている。
2点目は、同社が従来ハードウェア向けに開発してきた製品、たとえば同社のデータベース製品「DB2」や人工知能「ワトソン」をクラウドサービスとして展開することだ。たとえば今年10月からはワトソンを使った自動応答機能や分析機能といったサービスをBluemixで提供している。
3点目はIBMが従来から売ってきたサーバーコンピューターとクラウドの連携、インテグレーションだ。たとえば企業がデータベースにためている顧客情報管理(CRM)データをサービスに連携させるとき、データをつなぐためのサービス「IBM WebSphere Cast Iron」を安価に提供する。
きれいな戦術だけでなく、大手ならではの力技も外さない。たとえば料金は市価をリードするアマゾンに徹底的に合わせて下げている。
そしてコスト競争力を強める一方、SoftLayerを通じて12億ドル(約1429億円)もの資本をデータセンターに注ぎ込んだ。日本では12月、東京にデータセンターを開設予定だ。通常のクラウドだけでなく物理サーバー(ベアメタル)環境も時間で借りられる、最速10Gbpsの高速通信ができる、自社データセンター間の転送料金を無料にするなど付加価値でも勝負する。
米調査会社シナジー・リサーチによれば、アマゾン子会社Amazon Web Servicesが市場の大半を抱えながら売上成長率を弱める一方、IBMを含めた他のプレーヤーが成長速度を上げている。EC市場と同じように「低価格・多品種」で一強を保ってきたアマゾンにようやく競争相手が現れた形だ。
IBMのBluemixではIoT(インターネット・オブ・シングス)試作環境を整えるなど、将来への投資も進めている。怒濤の設備投資、価格戦略、そして自社製品のディスカウント(クラウド化)でアマゾンに対して横綱相撲を挑んだ構えだが、果たして。
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