何かを恐れているから?
先月アップルはiOS 8をリリースしたが、それに対する世間の反応は冷ややかなものであった。モバイル・マーケティング担当者によると、リリース初日にiOS 8をインストールしたユーザーの割合は、去年のiOS 7の約半分であったというのだ。
先日、アップルの最新の数値データが発表されたのだが、その数字は…まあ良くも悪くもない無難な結果といったところだろうか。
アップルが最新モバイルOSを公開してから約3週間経つが、いまだに半数以上のユーザーはiOS 8にアップグレードしていないというのである。
iOS 8はiOS 7にとって替われるか
アップルの開発者向けサイトはApp Storeでモバイル端末向けソフトのインストール状況を計測しているのだが、未だにiOS 7のデータがiOS 8と同程度見られるということだ。
アップルが発表したグラフによると、2014年10月5日時点でiOS 8の普及率は47%に達し、やっとiOS 7と並んだことがわかった。さらに古いバージョンを使用している6%は、新ソフトウェアをインストールできない旧型のOSを使用しているものとみられる。
MacRumorsは、データ分析会社であるMixpanelからのデータを引用し、昨年の同時期のiOS 7の普及率は約70%であり、ユーザーがこぞってiPhoneやiPad、またはiPod Touchで使用していたと指摘する。
なぜiOS 8はこんなにも不調なのだろうか?その答えは、報告されている不具合の中にあるのだ。
アップルは、ユーザーとアプリ開発者に向けて、iOSのいくつかの機能を大幅に刷新した。しかし、その結果生じた不具合に頭を悩まされることとなったのである。
関連記事:アップルは現状を打開しなければいけない
新型で未検証のものには、必ずと言っていいほど問題が存在するものだ。そしてこの件に関しては、アップルも例外ではない。すぐにiOS 8.0.0とiOS 8.0.1をダウンロードしたユーザーたちは、着信の不具合、バッテリの寿命の悪化、カメラ・ロールの写真フォルダの削除といった不具合を経験する羽目になった。
アップルは、これらの不具合に迅速に対応しようとiOS 8.0.2を公開したが、またバグが起こるのではと疑うユーザーの不信感を、完全には払拭できなかった。少なくとも半数以上のiPhoneユーザーたちは、すぐに飛びつくことなくしばらく様子を見ているようである。
さらに悪いことに、先月、アップルはiOS 7.1.2のサポートを終了してしまった。つまり、iOS 8に移行したものの、やっぱりダウングレードしたいと願うユーザーにとって、前バージョンのソフトフェアを公式な形で復元できる方法が無くなってしまったのだ。
iOS 8.1は期待できるか?
先週、開発者向けに、新しい次期バージョンiOS 8.1が配布開始された。ユーザー向けの正式リリースは、アップルが次期iPadを発表するタイミングに合わせた今月後半に発表されるのではないかと噂されている。
発表予定のアップデート版では、大幅なバグ修正が行われ、9月にアップルのプレスイベントで披露された新決済システム「Apple Pay」が実装されているらしい。
この注目の新機能や改善点を搭載した新バージョンは、iOS 8インストール普及の大きなきっかけとなるかもしれない。しかしその一方で、今まで散々iPhoneのバグに振り回されてきたユーザーからは、また怪しい新テクノロジーが出現した、と冷ややかな目で見過ごされる可能性も否めない。
なぜなら、その会社にかなりの信用と信頼がない限りクレジットカード情報を入力するのは、相当勇気がいることだからだ。新サービス公開時に失敗を繰り返すアップルに、この信用と信頼を勝ち取ることができるのかは疑問である。
モバイルにおいて、アップルはここ数年、成功もしてきたが同じくらいの失態も演じてきた。初代iPod、iPhoneやApp Storeでの華やかな成功を手にしてきた同社だが、SiriやApple Mapsといった中途半端な機能や、悪夢ともいえるiPhone 4の「アンテナ問題」で散々批判も浴びてきたのである。
そして今回アップルは、iOS 8によってその恥ずべき歴史をまた一つ積み重ねることとなってしまった。おまけに、どの問題も全て解決済みではないときているのだ。
もしアップルが、iPhoneをお財布代わりとして使用してほしいのならば、まずはその安全性を完璧なものにするべきである。そしてバグの修正の他に取り組むべきものに気が付かなければならない。それは、iOS 8で失ってしまったユーザーの信頼回復だ。
恐らくこれが何よりも難しいものと言えるだろう。
画像提供:
トップ画像:Adriana Lee
Apple Pay画像:Stephanie Chan
Adriana Lee
[原文]
※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら