大阪に本社を置くミルボンは、2012年に情報系システムをOffice 365やSharePoint Online、Salesforceなどでクラウド化。また、アイキューブドシステムズの「CLOMO MDM」を活用し、スマートフォンの積極的な業務利用と高いセキュリティを両立させた。
モノを売らない営業活動が競争力の源泉
創業50年を迎えたミルボンは、パーマ、ヘアカラー、ヘアケアーなどの頭髪用化粧品を専門の扱う国産メーカーだ。販売代理店を介して、エンドユーザーとなるヘアサロンに商品を展開している。この10年近くグローバル展開を強化しており、アジアや北米を中心に拠点を展開している。
同社がユニークなのは、「フィールド活動」と呼ばれる独自の営業活動だ。これはエンドユーザーのヘアサロンや販売代理店の課題を共有し、ともに解決する方策を考えるというもの。ミルボン 経営戦略部 情報企画室 統括マネージャーの畠中健二氏は、「ヘアサロン様はハサミを使ったり、薬剤を使うといった技術はお持ちです。でも、たとえば1日10人の髪の毛を洗う美容師さんなら、やはり手肌も傷みますよね。その他、人の教育、サロンの経営、最新トレンドの収集などさまざまな課題を抱えていらっしゃいます」と説明する。単に代理店に商品を卸すだけにとどまらない、こうした「モノを売らない営業活動」を同社はすでに30年以上続けているという。「コンサルティングではないんです。お客様から教わっているのは、むしろわれわれの方です」(畠中氏)。ヘアサロンや代理店から来た相談に必ず応えるという点が、技術講習や商品宣伝を主体とした外資系のベンダーと大きな違いになる。
こうしたフィールド活動の中で、同社では古くから情報共有やコミュニケーションの風土が培われてきたという。「営業の現場で気づいたことを各営業所にFAXで送信して、共有する体制が今から30年前にはありました。また、全国の幹部を集めて、情報を共有し、状況把握やトレンド分析に活かしていました」(畠中氏)とのこと。とにかく現場の担当が見聞きしたことを脚色せずにそのまま共有するのが特徴で、市場に起こっていることをつまびらかにするのが重要だったという。
紙からデジタル。そしてクラウドへ
ミルボンでは1980~1990年代は紙をベースにフィールド活動を進めてきたが、2000年には情報システム部門が主体となって全社システムとして「Lotus Notes/Domino」を導入。社員用にPCも配布し、紙での情報共有をデジタル化しつつ、将来的にも蓄積・活用する体制を整えたという。
しかし、デジタルでの情報共有体制が確立してすでに10年以上が経ち、Lotus Notes/Dominoもさすがに陳腐化してきた。また、情報システム部門自体がインフラの運用やシステム開発のアウトソーシングを積極的に進め、情報企画室としてよりビジネスに直結したIT活用を経営に提案する役割を持つようになってきた。この結果、フィールド活動を含めた情報系システム全体を全面的に外部運用する必要が出てきたという。
約2年間の検討の結果、2012年に同社は情報系システムを全面的に刷新し、クラウド化を一気に進めた。まずLotus Note/Dominoの置き換えとしてマイクロソフトの「Office 365」と「SharePoint Online」を導入した。Office 365に関しては「メールと掲示板を外部で運用可能で、しかもグローバルで展開できるというのが決め手ですね」(畠中氏)。
また、営業支援システムとしてセールスフォース・ドットコムの「Salesforce」も導入した。畠中氏と情報系システムを切り盛りする経営戦略部 情報企画室 サブマネージャーの伊藤文宏氏は、「一番大きいのは『Chatter』です。Notesではユーザーが能動的に情報を取りに行かなければなりませんでした。でも、Chatterを使えば、バックヤードの人間も含め、情報がプッシュ型で配信できます」とSalesforce導入の経緯について説明する。Salesforceでは入力した情報を自動的に整理するよう作り込み、蓄積された情報をより活用しやすくしているという。
(次ページ、UltrabookとiPhoneで最強のモバイルワーク装備を構築)
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