※この記事は橘・フクシマ・咲江氏のメールマガジン「キャリア羅針盤 - グローバル社会を生き抜くために -」(「ビジスパ」にて配信中)から選んだコンテンツを編集しお届けしています。
日本の「真面目さ」はどこまでグローバルに通用するのか……日本企業のグローバル化を見つめる橘・フクシマ・咲江氏は、グローバル人財の要件の重要な要素として、「真面目さ」を挙げ、海外でもそれが受け入れられ始めていると指摘する。
日本人はやはり真面目です。コーン・フェリー・インターナショナルのアジアの調査では、「日本人エグゼクティブの強みと育成が必要な領域」のうち、強みとしては「インテグリティー・信頼」「倫理観と価値観」が一位、二位に挙がっています。
海外から評価される日本人の真面目さ
昨年北京で開催された日中経営者フォーラムの際に日本の参加者から「中国では騙すより騙される方が悪いと言うが本当か」との質問がありました。それに対する答えは、日本の真面目さに対する評価でした。
その例として、回答者の中国人の方が、「日本のメーカーからカシミアとウールの50-50の混紡セーターを買った。その際に本当にそうか確認したところそうだと言った。ところが後からメーカーから連絡があり、実際には少し他の繊維が混じっていたので、全額返金すると言ってきた。その真面目さに感銘を受けた」ということでした。
一方ではこうしたサービスが、海外投資家からは「過剰サービス」と指摘され、経営効率の悪さの批判となると言う話も聞いています。確かにサービスは慣れてしまえばさらに欲しくなるという性質のもので、上を目指せばきりがなく、また時には、サービスは受け取る人が何を重要視するかの好みもあるので、過剰になる場合もあり得ます。
本当のサービスは「顧客のニーズを正確に把握して、そのニーズを満たす」ということです。しかし、まだサービスが歴史的にそのレベルまで到達していない国、例えば中国のような国では、ヤマト運輸や、加賀屋等のような日本の「挨拶、服装、丁寧な所作」等「おもてなし」を重視したサービスも受け入れられ始めているようです。
海外からのビジネスマンも、「生活のしやすさでは日本は本当に居心地が良い」と言います。その一つがサービスのレベルの高さと、日本人の真面目さ、誠実さだと言います。企業レベルで真面目さがグローバルに通用するかのテストは企業理念のグローバル展開ではないでしょうか。
日本企業が企業理念に持つ誠実さ
日本の「真面目」な企業理念はグローバルに通用するでしょうか
私は「する」と思っています。最近日本企業はグローバル化の中で、どうやって多様な国籍、価値観の社員に「日本企業」の創業理念を浸透させられるかで苦労をしているようです。そのために理念の意味するところ、企業の歴史的アイデンティティーを変えずに、グローバルに通用する理念を作成しようとしているところが多くなりました。
このところ8社ほどの人財のグローバル化戦略を見る機会がありました。すると、このソフト面、「精神」の浸透が制度等のハード面よりも課題のようです。ハード面はそれを可能にする仕組みに過ぎず、それをどう運用するかに加えて、信念を繰り返し行動で示し「外柔内剛」な対応をすることが重要ということのようです。
人財コンサルタントの仕事を通して、様々な国籍の企業を見てきましたが、東西を問わず、企業の成功にはやはり「人財がどれだけその企業に対して精神的にコミットメントを持てるか」が要のようです。そして、それを体現するのが企業理念の浸透です。
日本企業の多くはその企業理念に「誠実さ」という要件が、言葉は違っても入っています。これは、「真面目」に努力することの大切さを表しています。これが、「騙すより騙される方が悪い」とまでは言わなくても、違った価値観の中でどう受け入れられるかがテストだと思います。
私はナイーブな信念で、「人間の共通の心理は、人を不愉快にするより、喜んでもらって自分も幸せを感じる」と思っています。これは、万国共通の心理ではないかと思います。その意味でも日本企業のグローバル化の中で、企業理念のグローバル化には大いに期待しています。
【筆者プロフィール】橘・フクシマ・咲江
コーン・フェリー・インターナショナル日本法人代表取締役社長、会長を務め、2010年8月アジア・パシフィック地域最高顧問に就任すると同時にG&S Global Advisors Inc.を設立し、代表取締役社長に就任。コーン・フェリー米国本社の取締役を12年間務め、花王、ソニー等の初の女性独立取締役を歴任。現在はブリヂストン、パルコの独立取締役で、「人財革命」をはじめキャリアに関する著書多数。コーポレート・ガバナンスも含めて広く執筆・講演活動も行っている。
「ビジスパ」にてメルマガ「キャリア羅針盤 - グローバル社会を生き抜くために -」を執筆中。
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