「ニューメディア時代」──。
アラフォー世代以上ならば、この言葉にピンとくるかもしれない。
1984年に通産省(現在の経産省)が打ち出したニューメディア・コミュニティ構想、1983年に郵政省が打ち出したテレトピア構想などを背景に、今後、到来するであろう新たな情報化時代を表現した言葉である。
これらの構想には、各地域ごとにおける情報システムの構築推進とともに、光ファイバーなどによる全国的な情報ネットワークの敷設、地域間の情報格差是正などが盛り込まれていた。
CATVや高度情報通信システムといった言葉がキーワードとなり、一部地域ではモデル地区として、家庭を結んだネットワーク化が実験されたほか、AV・IT産業では、これを具現化するものとして、テレビを中心として、パソコン(当時はMSXという機器もあった)やワープロ専用機の接続、FAXとの連動やCATV接続によるネットワーク化などへの取り組みが進められていたのだ。
当時のブラウン管テレビのCMでは、ニューメディア時代という言葉が頻繁に用いられ、まさに新たな時代のテレビを訴求するバズワードとなっていたのだ。
だが、ニューメディア時代は、それぞれの構想で描かれた世界のすべてが実現したわけではなかった。いまのようにインターネットがない時代であり、ネットワーク技術やデジタル放送技術なども、構想で描かれた「絵」を実用化するには、まだまだ改善が必要な時代だった。
2010年、テレビは例年の2.5倍売られた
それから25年以上が経過し、ようやく本当の意味で、ニューメディア時代が到来したとはいえまいか。各家庭までネットワーク化が敷かれ、様々な情報を入手できるようになった。それはまさにニューメディア時代で目指されたものであったといっていい。
そして、2011年7月24日に予定されている地デジへの完全移行によって、それはさらに加速することになる。この日を境に、日本のAV・IT産業は大きな転換期を迎える。
それは、デジタル家電の成長期から成熟期への転換だと言える。周知のように、2010年のテレビ需要は、地デジへの完全移行の期日が迫るとともに、エコポイント制度の影響も追い風となり、空前ともいえる活況を呈している。
例年は、年間1000万台といわれてきた国内テレビ需要は、2010年11月単月だけで600万台を販売したとも試算されており、年間出荷台数は、社団法人電子情報機器産業協会(JEITA)の予測では年間2300万台(関連サイト)、調査会社のGfK Japanでは年間2500万台に達するとの予測が発表されている(関連サイト1、関連サイト2)。逆算すれば、2年半ぶんをこの1年で一気に売ってしまったということになる。
当然のことながら、2011年7月以降にはこの反動が出てくるのは明らかだ。
JEITAでは、2011年の薄型テレビの需要は年間1000万台程度と予測。GfK Japanでは2009年実績の1390万台を若干下回る規模になると予測している。
2011年7月までは、旺盛な需要が続くということを背景にした予測であるのが理由だが、この影響がなくなる2012年には、1000万台の出荷規模を下回るのは明らかであり、業界内では700万台規模に留まるとの見方もある。わずか2年で1/3以下にまで市場規模が縮小するというわけだ。
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