米AMDは19日、台北で開催したイベント「AMD Technical Forum & Exhibition」の基調講演にて、CPUとGPUを一体化した次世代プロセッサー「Fusion APU」についての最新情報やデモを公開。Fusionのひとつ「Llano」(ラノ)の32nm版ウェハーや「Zacate」(ザカーテ)のチップを披露した。
同社副社長兼クライアント部門担当ジェネラルマネージャーのクリス・クロウラン(Chris Cloran)氏によるFusion APU(Accelerated Processing Unit)に関する基調講演では、Fusionの最新情報とデモなどが示された。
第1世代のFusionは、AMDの次世代CPUコアとDirectX 11対応GPUをひとつのダイ上で結合したGPU統合型CPUとなる。一般的なx86命令を高速に処理するCPUと、グラフィックスやビデオ関連の並列演算を高速に処理するGPUを一体化することで、性能向上を目指す。またモバイル向けに低消費電力も重視されている。
ノートパソコン向けFusion APUには、「Brazos」(ブラゾス)と呼ばれるプラットフォームに対応する、メインストリームノート向けの「Zacate」と、ネットブック/薄型ノート向けの「Ontario」の2種類が用意される(名称はいずれもコード名)。どちらも次世代モバイルCPUコア「Bobcat」とDirectX 11世代GPUを実装し、HDコンテンツの再生やまる1日保つ(All-Day)バッテリー駆動時間を目指している。Zacateの消費電力は18W、Ontarioは9Wの予定。
講演中には、インテルのCore i5-520M(2.40GHz)とZacate(動作周波数不明)で、Windowsの汎用GPU演算API「DirectCompute」を使った浮動小数点演算を実行させた様子を比較。Core i5が8.8GFLOPS程度のところを、内蔵GPUを駆使したZacateは、2.4倍近い21GFLOPSもの処理速度を発揮。しかもその状態での消費電力は、Core i5が38W程度に対して、Zacateは19Wと、高性能ながら消費電力も低いことを見せつけた。
一方、ノートからデスクトップまでをカバーするLlanoのデモでは、HDビデオを再生しながら円周率3200万桁までの計算を行ないつつ、DirectComputeの演算デモも同時にこなすというヘビーな処理の同時処理を披露。これだけ負荷のかかった状態でも、浮動小数点演算は33.9GFLOPSという高性能を発揮していた。
2011年というスケジュールには特に変更はないもよう。ウエハーも披露したことで、製造も進みつつあるようだ。特にネットブックや低価格モバイルノートに採用されれば、「低価格・低性能」といったイメージが定着しているこのジャンルに、劇的な性能向上と快適さをもたらすことになるかもしれない。製品の登場に期待したい。
次世代GPU「Northern Island」の発表は22日!
また別の基調講演では、AMDの次世代GPU「Northern Island」の発表が22日であるという情報も公開された。イベント会場ではNorthern Islandと思われるグラフィックスカードを搭載したデモ機が多数稼働しており、製品登場も間近かと期待される。