最近はテレビなどの一般向けメディアでも、「クラウド」というキーワードをよく耳にするようになってきた。現代人は後生において、「クラウド世代」と呼ばれることになるのだろう。
そうした時流の中でマイクロソフトは、クラウドサービスを提供する基盤としての「Windows Azure」を2009年11月に正式発表した(関連記事)。Googleのようにクラウドサービスを提供するのではなく、クラウドでアプリケーションを動作させる「オペレーティング・システム(OS)」でビジネスを行なうという点が大きく異なっている。
ここでは、マイクロソフトのクラウドへの取り組みなどについて、担当者のインタビューをまじえ、その戦略や方向性を明らかにしていこう。
マイクロソフトのクラウドとは?
2008年11月のPDC(Professional Developer Conference)で、マイクロソフトは最初に「Windows Azure」の存在を明かした。名前こそWindowsだが、このAzureはユーザーの手元にあるローカルマシンで動くWindowsではなく、マイクロソフト自身が構築するデータセンターで動くWindowsであり、ユーザーはこの上で“.NETアプリケーション”やASP.NETなどで作る“Webアプリケーション”を動作させて、クラウドで独自のサービスを提供できるようになるものだ。つまりAzureは、クラウドサービスを作るための「サービス」であり、「プラットフォーム」あるいは「OS」という存在なのである。
このAzureでは、SQLサーバーによるデータベースサービスや、.NETアプリケーションとクラウドサービスが連携する仕組みなどが提供される。データセンターは、世界の3ヵ所(2009年10月現在)で構築されており、すでに料金体系なども発表されている(関連記事)。また、SDKも公開されており、Visual Studioを使って開発を始めることもできる状況だ。
マイクロソフトといえば、ユーザーの管理するハードウェアにインストールして利用するOSのメーカーとして、これまで大きなシェアを持ってきた。それに対してクラウドビジネスを展開する各社は、ユーザー管理のシステム(オンプレミス)に対するクラウドの優位性を主張してきた。当初は、単なるインターネット上のサービスだったGoogleやAmazon.comといった企業は、「時代はクラウド」を標榜して、ユーザー自身のシステムをクラウド側に移行させるべく、開発プラットフォームを提供し始めた。これらに対抗するのがマイクロソフトのWindows Azureなのである。
(次ページ、「エバンジェリストに聞く、マイクロソフトのクラウド戦略」に続く)