スイッチでデータセンターが変わる 第1回
ブロケードがコンバージド・ファブリック・ソリューションの詳細を披露
FCoE時代のデータセンターを描く「BROCADE ONE」
2010年06月17日 07時30分更新
6月16日、ブロケードはFCoEを前提とした「コンバージド・ファブリック・ソリューション」についての説明会を開催した。6月9日に米ニューヨークで開催された“Brocade Technology Day”での発表内容となる。
プライベートクラウドの実現への道程
ブロケードは、FCoE時代を見据えたユニファイド・ネットワークの戦略とアーキテクチャだと位置づける「BROCADE ONE」を発表し、その中核的な技術となる「Brocade Virtual Cluster Switching(VCS)」と「Brocade Virtual Access Layer(VAL)」についても解説を行なった。
まず概要説明を行なった米Brocadeのワールドワイドセールス担当シニア・バイスプレジデントのイアン・ホワイティング氏は、「ブロケードは企業としての変革を遂げている」とし、現在の同社の戦略の中核が「データセンターの仮想化」を経て「プライベートクラウドの実現」にあるとした。その上で同氏は、「仮想化技術はプライベートクラウドサービスを実現するためのもの」と位置づける一方で「ネットワークのコンバージェンスはプライベートクラウドのための技術というよりは、データセンターの複雑性を簡素化するためのものだ」とし、FCoEによって実現されるネットワーク・コンバージェンスは仮想化/プライベートクラウドといった概念とは独立して効果を発揮しうるものだと語った。
もっとも、そういいながらも急速にFCoEへの移行が進むとは見ていない点がおもしろいところで、同氏は「当面は仮想化環境の実現はFC-SAN中心に進行し、FCoEの採用は時間をかけて緩やかに進んでいくだろう」という。それを踏まえ、ブロケードでは今後もFCやEthernetに対する開発投資は継続していくと確約した。
同氏はまた“Brocade Oneアーキテクチャ”の概念図を紹介した上で、「従来はデータセンターに対して求められていた機能や信頼性を、ネットワーク全体で実現することが求められるようになってきている」とし、簡素化された構成で高度な環境を実現できるBrocade Oneの意義を強調した。
2つの仮想化技術「VCS」と「VAL」
続いて、米Brocadeのデータセンター製品部門 プロダクト・マネジメント担当バイスプレジデントのダグ・イングラハム氏が詳細説明を行なった。
同氏は、「初期段階の仮想化技術の導入では、サーバーの利用効率は70~80%にまで向上したが、データセンター全体ではまだ効率は低いままな上、複雑性は増大してしまっている」と現状の問題点を指摘した上で、複雑性の解消につながる取り組みとして、同社のVALおよびVCSの説明を行なった。
VAL(Virtual Access Layer)は、「アプリケーション アウェア ネットワーキング」と説明されており、「ネットワーク接続性をVMにまで拡大する論理的要素」だと説明されている。ブロケードのコンバージド・ファブリックと仮想化ソフトウェア(ハイパーバイザ)の間の論理レイヤで、VMware、Hyper-V、Xenなどに対応する。
2010年第4四半期に投入予定の製品では265個の仮想NICを設定可能になる予定。このため、物理サーバ上で稼働する仮想サーバーにそれぞれ専用の仮想NICを割り当て、一貫したインターフェイスを提供することができるようになる技術だと思われる。
VCS(Virtual Cluster Swithing)は、複数のスイッチを論理的な1台のスイッチとして扱う技術。現在のEthernet/TCP/IPネットワークで使われているスパニングツリー(STP)を使わずに冗長経路を確保できるという。スパニングツリーでは、ループした経路がルーティングを混乱させることを防ぐため、通常は一方の経路を論理的に遮断しておき、使用中の経路に障害が発生した場合には遮断を解除して迂回経路を使って通信を維持できるように制御する。この場合、経路の一部は通常使われないし、切り替えに一定の時間を要する。VCSではマルチパスで通信を行ない、ロスレスで低遅延という特徴があるという。
マルチベンダーでの仮想化ソリューション
最後に登壇したブロケード コミュニケーション システムズの代表取締役社長の青葉 雅和氏は、同社の強みを「OEMパートナーとの強い結びつき」だとした。元々FC-SANスイッチで定評のある同社は、サーバーやストレージのベンダーなどに製品をOEM提供してきた。このため、業界の主要ハードウェアベンダーとのパートナーシップがすでに確立されている。
同氏は、「シングルベンダーでデータセンターを構築するのは難しい」と指摘し、さまざまなパートナーとの協力関係に基づいてデータセンターの仮想化/プライベートクラウド化を推進していける同社のソリューションがユーザーにとって導入しやすいものであることを強調した。明言はされなかったものの、これはネットワーク・ファブリックからサーバーまでを自社製品として揃えてコンバージド・ネットワークに取り組むシスコとの戦略の違いをアピールしたものだと理解できる。
FCoEに積極的に取り組むシスコとブロケードの戦略が出揃い、その違いも明らかになってきたところで、次の興味はユーザーはどちらを選ぶのか、という点に移ることになる。
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