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大企業アマゾンに俊敏さで挑む漫画全巻ドットコム (1/2)

2010年04月07日 13時00分更新

文●三浦たまみ

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※この記事は、「徹底解剖! 成功ネットショップの現場ノウハウ」の第35回です。過去の記事もご覧ください。


 中小規模のネットショップが生き抜くためには、大手とは一線を画す“強み”を見つけることが必要です。そして、見つけた強みを、いかに多くの人にアピールするかが、差異化を図るために大切なこと。ここでも、「大手にはない視点」で、中小規模のショップだからこそできる販促活動を実践していく必要があります。


大手にできない、フットワークの軽さを武器に

 多額の費用を広告費に充てられる、桁違いの商品ラインアップを用意できるなど、資金面でいえば到底、中小規模のネットショップは大手に太刀打ちできません。しかし反面、大手ネットショップは大企業ゆえに組織的に動かざるを得ない場面が多く、「思い立った販促のアイデアを、即、実行する」という俊敏さに欠けます。中小規模ネットショップならではの「フットワークの軽さ」をいかに活用できるかが、1つのポイントです。

 漫画の全巻セットを販売する『漫画全巻ドットコム』は、フットワークの軽さを存分に活用し、大手にはできないキャンペーンを積極的に展開しています。以下の「ドラゴン桜フェア」の特設ページを見てください。


 「ドラゴン桜」という漫画の版元である講談社の協力を得て実現したキャンペーンです。東大合格を目指すという内容の漫画にちなみ、受験シーズンに合わせて開催する、合格絵馬や漫画家のサインが抽選で当たるようにするなど、漫画ファンのツボをついた企画を用意したことで、『漫画全巻ドットコム』の2000点以上のラインナップ中、売上11位にランクイン。多くの顧客を惹きつけることに成功しました。

 では、大手出版社がアマゾンなどの大手ECサイトではなく、『漫画全巻ドットコム』に協力してくれたのはなぜでしょうか。店主の安藤拓郎さんはこのように話します。

「アマゾンほどの大手と何か企画を立ち上げようとすれば、全社的な一大プロジェクトになってしまうこともあり、企画立案から実行までに時間がかかる可能性が高い。でも、僕らのような少人数の規模で運営している会社と組むなら、双方の担当者が1名ずついれば、こうしたいという思いを、即、形にして実行できます。こうしたフットワークの軽さは評価してもらえた1つの要因だと思います」

 出版社にとっても『漫画全巻ドットコム』にとっても、「“旬ではない商材”を、キャンペーンという名のもと大々的に宣伝ができる」という大きなメリットがあるといいます。

「まさに今、テレビドラマ化されている、映画化されているような漫画は、特別にキャンペーンを打たずとも売れていきます。ということは、力を入れて販売していくべきは、“その他大勢”の漫画。『ドラゴン桜』は人気漫画ですが、すでに週刊誌の連載が終わっているので、当然ブームにも陰りが見えてきます。こうした漫画を、いかに頭をひねって売っていくかが実は大きなテーマです」

 これは、他の商材を扱うネットショップにとっても同じこと。今売れている商品だけでなく、「今後、力を入れて売っていきたい商品」を、どうしたら効果的に売ることができるか考え、プロデュースしていくか。安藤さんのように、商材の特性を熟知していれば、的を射た販促を仕掛けられるはずです。

■今回の成功ネットショップ:
漫画の全巻セット販売『漫画全巻ドットコム』

漫画全巻ドットコム


2006年8月、漫画の全巻セット販売に特化したネットショップとしてオープン。開業当初は中古本を扱っていたが、 2007年9月、すべての商品を新刊本に切り替える。2008年度後期の年商約7億円。楽天市場、Yahoo! ショッピング、ビッダーズにも支店がある。

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