地デジチューナーの発売が解禁された当初は、録画したデータは録画したPCで見ることしかできず、メディアにダビングするとしても画質で劣るDVDがやっとの状態だったため、「アナログから地デジになってコンテンツが自由に扱えず不便になった」と感じたユーザーも多かったはずだ。
しかしそれから約2年。各メーカーの開発により、ようやくアナログ時代以上の利便性を実現しつつある。それが録画番組のネットワーク配信機能だ。
アナログ時代もネットワーク配信できる製品があったが、統一されたものではなく、各社独自仕様のものが中心だった。それがデジタル時代になり、メーカーをまたいだ機器間で録画データを楽しめるようになってきた。今回はその最新事情を解説しよう。
LAN経由でデジタル放送を配信するのに
必要となる「DLNA」と「DTCP-IP」
現在たとえば無線LANでPCやデジタル機器を接続するのに、特定のメーカーの製品同士でないと接続できないかも……などと気にするユーザーはほとんどいないだろう。著作権保護が施されたデジタル放送の録画データでも、無線LANなどと同じように統一された規格でデータの再生や転送が可能になりつつある。それがDLNAとDTCP-IPだ。
DLNA(Digital Living Network Alliance)は、PCとデジタル家電を繋ぐ約束事(方式)を策定するための団体で、この団体にはインテル、マイクロソフトなどPCの基幹となる製品を作るメーカーから、パナソニック、シャープ、ソニーなどの家電メーカーまで幅広く加盟している。この団体が策定したルールにしたがって作られた製品がDLNA認定製品だ。
DLNAに対応していれば、メーカーが違っても相互にネットワークを通して、映像、写真、音楽データを機器間で共有することができる。つまり、無線LANでいうところのIEEE802.11b/g/nのようなものだ。DLNAにも複数のバージョンがあるため、認定されているからと言って必ずしも繋がるわけではないが、これは今後徐々に整合性がとれていくだろう。
ただし、DLNAに対応しているからといって、それだけでデジタル放送のデータをネットワーク経由で再生できるわけではない。というのも、デジタル放送では勝手に録画データを複製できないよう著作権保護が求められている。しかし一般的なTCP/IPのネットワークは基本的にデータを暗号化せずに送受信するため、そのまま録画データを流したのでは、簡単にコピーできるソフトが作られてしまう。
そこで、通信の中身を暗号化し、データ複製が勝手に作れない仕組みが開発された。それがDTCP-IPだ。DTCPは元々IEEE1394(i.LINK)で搭載されていた著作権保護技術をIPネットワーク上で使えるようにしたものである。
DLNAでメーカー間で共通の通信方式を確立し、DTCP-IPで著作権を保護する。この2つがそろってようやく家庭内でデジタル放送(3波チューナーで録画したBS/110度CSデジタル放送も含む)の録画データを共有することができるようになったわけだ。
第2回第3回で紹介した、PC用の地デジチューナー製品には、このDLNA/DTCP-IPに対応したサーバーソフトが搭載されるケースが多くなっている。たとえばアイ・オー・データ機器の「mAgicTV Digital」ではソフトウェアをインストールするだけで、何も設定しなくとも録画した番組をネットワーク越しに再生できた。
DLNA+DTCP-IPの組み合わせで、デジタル放送の録画データをネットワーク配信できることがわかったが、さて実際にはどのような組み合わせで映像を楽しむことができるのだろうか。次ページ以降で具体的に紹介していく。
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