メールクライアントソフトは、Webブラウザーと並んで毎日使うアプリケーションだ。ただ、最近はWebメールを導入する企業も増えてきており、Webブラウザーほど開発競争が激しい分野、というわけでもないのが実情だ。特にGmailを使ってみると、なるほどGoogleと思わせる検索の早さに舌を巻く。
Mozillaが2年半ぶりにメジャーバージョンアップして、11月にリリース予定の「Thunderbird 3」は、そんな素早い検索を実現するというメールクライアントソフトだ。
現行のThunderbird 2は、受信したメールをテキスト形式でローカルに保存し、検索を実行するたびにその内容を検索していた。また、件名(タイトル)、メッセージ本文、宛先などを個別に指定しなければならず、メールが増えるほど目的のメールを検索で見つけるのが難しかった。
対して、Thunderbird 3ではデータベースエンジン「SQLite」とメール検索エンジン「Gloda」を搭載。受信したメールを自動的にインデックスに集約するため、高速な検索が可能になったという。Mozilla Japanのマーケティング部Webマーケティング担当の吉野公平氏が自身の環境(約7万7000通の受信メール)で検索したところ、5分17秒かかっていたところが10秒に短縮されたとのこと。
また、キーワード検索だけでなく、日付や宛先など複数条件での絞り込み検索が可能になったほか、日付を横軸、該当メールの件数を縦軸にしたグラフ表示も行なえ、頻繁にメールをやりとりした時期を思い出して該当メールを見つけ出す、といった使い方もできる。
この検索機能は、Windows版であればWindows Vista/7の「Windows Search」、Mac OS X版では「Spotlight」というOS標準の検索機能とも連携する。文書ファイルを探すと同時に、関連するメールも見つけられるというわけだ。
このほか、メッセージのタブ表示、1クリック操作でのアドレス帳登録、複数メッセージを選択したときの要約ビューなど、毎日使うアプリケーションだけに使い勝手を大幅に向上させている。
ビジネスシーンで特に便利そうな新機能として、添付ファイルの付け忘れ防止機能が搭載された。メール本文に「添付」「attachment」などの単語が含まれている場合、メール編集画面に警告メッセージが表示される。
Thunderbird 3は、10月29日現在「Beta 4」で、開発者向けに提供されている(評価用バージョンなので、使用は自己責任で)。正式版は11月にリリースされる予定だ。
メール以外のメッセージ・コミュニケーションは?
Mozilla RainDropを開発中!
今回、Thunderbird 3の記者説明会のために初来日したMozilla Messaging担当CEOのDavid Ascher氏は、昨今のネットワーク・コミュニケーション環境がメール以外にも拡大していることを指摘。Mozillaとしては、メールクライアントの機能強化、使い勝手の向上を図るべく、Thunderbirdの開発を継続している。しかし、メッセンジャーやTwitter、ボイスチャットなど、最近急速に広まっているリアルタイムコミュニケーションを一元管理するためのプロジェクト「Raindrop」をMozilla Labsで進めていると明かした。
現在は登録した開発者だけが利用可能なクローズドベータ状態。実際に試すことはできなかったが、Webブラウザーに専用クライアントと、サービスに応じて複数のアプリを使い分けなければ現状を変える、と意気込んでいる。詳細は関連サイト(英語)を参照いただきたい。