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ストレージ管理の切り札 「ARX」を深く濃く解説 第4回

バイト単価のコストを3分の1に削減!

データ増大にARXを用いたアーカイブで対応したセガ

2009年12月17日 10時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 記事協力●F5ネットワークスジャパン

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ARXをいち早く導入し、効率的なファイルストレージの運用を実現したのがゲーム会社のセガである。ファイルサーバーの容量を圧迫続けるデータの増大に対応するため、ARXを用いて効率的なアーカイブシステムを構築。管理の負荷やコストを大きく軽減することに成功した。

1年で倍以上に膨らむデータ
40時間かかるバックアップ

 ソニックやバーチャファイター、ぷよぷよなどの人気シリーズを抱え、日本を代表するゲーム会社として業界に大きな存在感を持つセガ。同社は2008年の11月にARX 500を2台導入し、全社ファイルサーバーの仮想化を実現した。

セガのアーケードゲーム最新作「シャイニング・フォース クロス」。ゲームセンター間をつなぐネットワークインフラ「ALL.Net」を利用した、ネットワーク協力型アクションRPG。最大4人のプレイヤーが全国からマッチングされ、協力して冒険に臨む ©SEGA

 ARXの導入により、古いファイルを安価なサーバーに自動的に移行させるアーカイブが実現。メインとなるファイルサーバーの管理の手間を大きく減らし、バイト単価のトータルコストを3分の1にまで落とすことができたという。

 今回、同社の情報システム部が全社ファイルサーバーのアーカイブシステムの導入に踏み切った背景には、爆発的なデータの増大という事態がある。

 同社の全社ファイルサーバーはあらゆる部署が利用でき、現在200近くの共有フォルダーが目的や部門ごとに用意されている。これらの共有フォルダーには、会計や経理、人事といった業務系のファイル、ゲーム開発用の素材など、実にさまざまな非構造型データが収納される。そして、各フォルダーは適切なアクセス権が設定されており、各部署で選出された担当者がフォルダーごとに運用を行なっている。

株式会社セガ コーポレート本部情報システム部 IT企画チーム主任 目崎竜一郎氏

 だが近年、この全社ファイルサーバーのデータ量が急激に増えているという。情報システム部 IT企画チーム主任の目崎竜一郎氏は、「3〜4年くらいまえは1TBほどでしたけれど、ここ数年で一気に10TB近くになってしまいました。大容量の動画や画像などが増えたことで、月間での増加率も5〜7%になりました。年間で見ると倍以上のペースでデータ量が大きくなっています」と急激なデータの増大についてこう語っている。

 これにともないバックアップの時間も途方もないものになった。「バックアップが1日くらいでは全然完了しなくなってきました。40時間かけても取りきれないという事態に至り、危機感を覚えました。長くなると失敗した場合のリトライも簡単にはいきません」と目崎氏は語る。

 このデータ量の増大に対して、これまではディスクの追加などで対応してきたが、いよいよ作業の負荷が大きくなってきた。サーバーリプレースやディスク増設によって容量を増やすことで急場をしのいでいたが、導入手続きや申請、関係部署との調整などがきわめて大きく、担当者をかなりの時間拘束する必要がでてきたという。

アーカイブシステムに不満
ファイル仮想化の「ARX」を検討

 「データが増えたら増設」という対応に限界を感じた情報システム部が導入を検討したのが、いわゆるアーカイブシステムである。アーカイブシステムは使用頻度の低い過去のデータを本システムから切り離し、検索可能な状態で保存する仕組みを指す。これにより、全社ファイルサーバーで利用するディスク容量を減らし、バックアップの負荷を軽減させることが可能になる。

 目崎氏はさっそくアーカイブ製品を調べてみたが、機能を調べると要件を満たせない点があることがわかった。「一番重要なのは、ユーザーから見た使用感が変わらないことです。その観点でいくと、検討していたアーカイブソフトではWebブラウザー経由で検索しなければファイルはでてこないし、アーカイブを作る時点でファイルの更新日時が変わってしまいます。このようにユーザーの操作が変わるものは、なるべく避けたいと思っていました」(目崎氏)。その結果、アーカイブソフトではなく、SIerが提案してきたF5ネットワークスのARXを検討することにしたという。

 ARXでは、ファイルサーバーのファイルを更新日付に応じて異なるサーバーに振り分けるティアリング(階層化管理)の機能を持っている。この機能を活用すれば、本システムの高信頼のサーバーと低価格なアーカイブサーバーを使い分けることができるわけだ。また、既存のファイルサーバーを活かしつつ、アーカイブの仕組みを設けられるのも大きな利点だった。

(次ページ、さまざまなクライアントで徹底検証)


 

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