NEC、富士通の大手2社が、相次いでSaaS事業(クラウド事業)の強化策を発表した。2社ともに特徴的なのは、「カスタマイズが重要視される」という日本市場に合わせた形での事業展開をしようとしていることだ。
つまり、業務アプリケーションをサービスとして提供する点は従来のSaaSと同じだが、顧客の業務に合致するように高いカスタマイズ性を有しており、従来のSI的なきめの細かい対応をした上で、顧客企業のコスト削減を図ろうとしているのが特徴だ。
「プライベートSaaS」を前面に打ち出す富士通
まず富士通だが、初期導入コストの抑制、システム立ち上げの短期化、資産保有コストゼロといったSaaSの利点を顧客に提供するため、SaaS事業を強化する。
SaaSへのニーズは高まっているが、大企業を中心に、汎用的なSaaSのアプリケーションを適用できない例もある。そこで富士通は、企業に固有の業務をSaaSとして構築し、使用者をグループ会社や取引先、代理店、海外拠点などに限定して利用する“プライベートSaaS”のサービスを強化していく。
SaaSアプリケーションを構築する際に必要となる共通の部品を用意し、SOA(Service Oriented Architecture)でインプリメント、他のSaaSと組み合わせるなどして、短期間でシステムを構築するという。
また、開発・運用要員も強化する。同社は2008年9月に「SaaSアプリケーションプロジェクト室」を設置、さらに富士通グループ1000名のSEを育成してプライベートSaaSに向けた体制を強化したという。
さらに、SaaS商品のラインナップも拡充。CRM、SFA、高画質映像配信、ECサイトサービス、電子調達など11種類のSaaS商品を新規に開発してSaaS商品を30種に拡大したほか、e-ラーニングやグループウェアなど4商品の機能強化も完了した。
さらに、富士通グループのSaaS商品やパートナー商品を掲載した「富士通SaaSポータル」を開設。プロモーション強化を図っていくという。
NECは2012年度までにサービス要員1万人体制に
NECもまた、SaaSを含めた「クラウド指向」の新サービスを提供すると発表した。同社は4月1日付けで設立した「ITサービスビジネスユニット」を中核に、2012年度までにグループ全体でサービス要員を1万人にする体制を整えるという。
また、NECが保有しているプラットフォームを活用してサービスを提供する「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」を、7月から販売予定だ。これは、定型業務をサービスとして低コストで提供する「SaaS型」、同一目的を持つ同業種複数の顧客が共通システム基盤上で業務アプリケーションを利用する「共同センタ型」、顧客の業務プロセスをNECのコンサルタントが分析して、NECのシステム基盤上または顧客のシステム基盤上からサービスとして提供する「個別対応型」の3つを合わせたソリューションとなる。
さらに、仮想化システムの自動生成、リソース管理を効率的にするミドルウェアを新規開発するという。