日本AT&T(株)は10日、法人向けVPNソリューションの今後の戦略について説明会を開き、米AT&T研究所のVPNストラテジー・ディレクター、トム・シラクーサ(Tom Siracusa)氏が、今後の技術トレンドと、同社の研究開発の方向性について説明した。
米AT&T研究所のトム・シラクーサ氏 |
現在、日本AT&Tは法人向けにVPN、IP電話、ボイスメール、動画、データセンターなどを統合したIPソリューションを提供しているが、今後は“MPLS VPN”を中心にサービスを提供していく。MPLS(Multi-Protocol Label Switching)は、パケットのルーティングにIPアドレスではなく、独自に付加した“ラベル”を用いる転送技術。MPLS内ではIPアドレスが重複していてもかまわないため、同一のMPLS内に複数のVPNを仮想的に共存させることが容易にできる。IPアドレスを用いた通常のルーティングでは、特定の個所にトラフィックが集中するボトルネックが発生しやすいが、MPLS内ではラベル付けによる負荷分散が可能。
MPLSを基礎にしたVPNを構築し、顧客にIPソリューションを提供 |
MPLSは、効率的なネットワーク設計によってコストが抑えられるほか、アプリケーションレベルでのきめ細かな経路制御もできる。シラクーサ氏は例として、ワールドワイドでコールセンターを設置している企業を念頭にコールセンターへの音声通話を挙げ、「時間帯によって、呼び出しの転送先を変えることができる」と説明した。
AT&Tが構築しているMPLSベースのネットワークは、127ヵ国、1500拠点に及ぶ。システムのバックアップ用途に使われるデータセンターについても、30ヵ所を数え、こうした地理的に離れた場所にあるネットワークと、顧客のネットワークを統合することで、災害時のシステム復旧に強いソリューションを提供できるとした。
また、今後のサービスの方向性として、“統合ネットワーク”による“クアドラプルプレー”にも言及。将来的にはインターネット、音声通話、テレビ、モバイル通信の4種のアプリケーションすべてを1パッケージで提供していく方向で研究を進めていると説明した。
AT&Tが構築済みのネットワークは世界に1500拠点 | 今後は“クアドラプルプレー”も展開 |