「EBC363」。メモリは撮影用に取り付けたもので、付属しない |
とうとう、これまでに流通している小型マザーボードの限界を打ち破る極小マザーボードがデビューした。これまでも小型マザーボードに実績があるNexcomの“Embedded Controller”シリーズ最新作で、製品名は「EBC363」。昨年登場した5インチサイズのマザーボード「EBC563」を上回る機能が、なんと“手のひらサイズ”に詰め込まれているのだ。
常識を打ち破るスモールサイズだ |
手のひらサイズのマザーボードは2層構造で実現
目を見張るそのサイズは143(W)×102(D)mm。ほぼ3.5インチHDDと同じ面積である。この面積を実現するため、North Bridge、CPU、メモリスロットを搭載するドータボードがSouth Bridgeや各種コントローラ、コネクタを搭載するメインボードの上に載るという2層構造になっているのが大きな特徴だ。チップセットは“Twister-T”と呼ばれていた“ProSavage PN133T”(※1)。アキバ初登場となるProSavage PN133TはノートPCなどモバイル向けのチップセットで、Savage4ビデオコアを内蔵。Trident Blade3Dコアを内蔵する“Apollo PLE133”搭載のEBC563より性能は向上しており、よりホームユース向けの仕様と言えそうだ。ちなみにSouth Bridgeは“VT82686B”で、これはEBC563と同じ。
North BridgeとC3、メモリスロットを搭載するドータボード。これを重ねたときの高さはおよそ30mm弱(クーラーなど突起物含む) | South Bridge以下の拡張機能を担当するメインボード。このサイズがちょうど143×102mmになっている |
搭載するCPUはEBGAパッケージの組込み型CPUであるC3 E-Series-800MHz(133×6倍設定)。動作クロック自体はEBC563と変わっていないが、FSBが100MHzから133MHzへ向上している。800MHzのC3を冷却するにはファンが必須であるようで、EBC363ではC3とPN133Tの両方を覆う形状のCPU&チップクーラーを標準で搭載している。なお、サポートするメモリについてマニュアルやシルク印刷について記載はないため断言はできないが、FSBを考えるとPC133のSO-DIMMを用意した方がいいだろう。
IEEE1394コントローラやビデオエンコーダ、AC'97コーデックはすべてVIA製 |
South Bridge以下の拡張機能を司るメインボードにはインターフェイスが詰め込まれており、オンボードでRJ-45(Ethernet)、IEEE1394、D-Sub15ピン出力、ビデオ出力、サウンド出力とマイク入力端子を搭載。USB端子はハーネスで引き出す仕様だ。IEEE1394端子を備えるあたり、RJ-45を3つ装備していたEBC563とターゲットは明らかに異なると言えるだろう。家庭用のセットトップボックスなどでの利用を想定した製品なのかもしれない。
ボード裏面にはBIOS ROMのほか、PCMCIA TypeIIIに準拠するコンパクトフラッシュ(CF)用ソケットも用意。このCFスロットはCFをATAPIデバイスとして認識させるためのもので、EBC363ではこのCFスロットがセカンダリのマスタとして割り当てられ、2.5インチタイプのIDE HDDは1ch分、2台までのサポートとなっている。
有効無効を問わず、さまざまなコネクタが用意されている。マニュアルに説明されていないものも多い |
このほかマザーボード上には多くのピンヘッダが用意され、LVDS仕様やTTL仕様のLCD(液晶)を接続できるようになっているものの現在のところ有効な使い途はない。また、付属品にFPCケーブルも同梱されているがこれも用途は不明だ。
CFからもブート可能
超小型PC界に革命も?!
BIOS上から倍率設定が可能。また、ファンの回転数は約3000rpm |
入荷した高速電脳の協力で実際にテストを行ったところ、BIOSから倍率設定を3.0~6.0倍まで0.5倍刻みで設定可能で、実際に倍率の設定は有効だった。マザーボード上には6.5倍設定用と思われるジャンパもあるが、これが有効かどうかは現時点ではわからない。一方、FSBはBIOSから設定できず、ボード上にもそれらしきジャンパやディップスイッチはなかったため、設定できるかどうかは不明。定格設定で動作させた場合、クーラーを動作させていてもBIOS上の温度表示で60℃を超えてしまっていた。ファンの回転数は3000rpm前後でかなり静かだが、長時間使用する場合は、 倍率設定を下げるなどの工夫が必要かもしれない。
なお、PCMCIA TypeIIIの320MB CFカードを差してMS-DOSを起動させてみたところ問題なく起動。Windows 98以降を入れるとなると512MBのCF、あるいはIBMのマイクロドライブ(340MB/1GB)が欲しいところだが、どこまで正常に認識できるかは試してみないと分からない。
目的の違いからか、両者に搭載される機能も異なる。EBC563RではLANを3ポート装備しネットワークサーバー色が強かったが、EBC363ではホームユースを意識してかLANは1ポートになっているものの、IEEE1394を装備し標準でビデオ出力(S端子)もサポートしている。このあたりは家庭用のセットトップボックスのような使い方を想定しているようだ。
価格は5万9800円。決して安価ではないが、超小型PCを自作するうえで現時点最強のアイテムということに異を唱える人はいないだろう。電源さえ確保できれば、これまでの常識を打ち破る小ささのPCを実現できそうだ。
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