イーエムシージャパン(株)は22日、プレス関係者を招いて、同社の次世代ストレージビジョン“オート・インフォメーション・ストレージ(Autoamted Information Storage:Auto IS)”に関する説明会を開催した。米EMC社上級副社長兼最高技術責任者(CTO)のジム・ロスニー(James B.Rothnie)氏が説明した。
米EMC社上級副社長兼最高技術責任者のジム・ロスニー(James B.Rothnie)氏 |
Auto ISは、米EMCが2日に米国で開催したアナリスト向け会議で披露した、同社のストレージ製品に関する今後の技術的ビジョンで、“今後10年のストレージ技術ならびに市場リーダーシップを牽引する”重要なものと位置づけている。その会議においても、今回来日したロスニー氏が発表したという。
ロスニー氏によると、EMCはこれまで顧客に対して、
- 巨大なディスクドライブが使えるようにすること
- 通信ネットワークインフラとストレージの接続性を高めるために活動すること
- ストレージ管理技術/方法の見直し
という3つの分野に対して金銭的/人的投資を行なうと約束し、実行してきたという。
5年以上前、企業のストレージ管理者は、100GBごとに1人付ければよいとされていたが、これでは企業がもつデータが1PB(ペタバイト)にも達する現在では、管理者が1万人も必要になってしまう。EMCはこれに対して、“企業ストレージ”や“ネットワークストレージ”という概念を作り出し、管理者1人あたりのストレージ容量を6~7TB(テラバイト)まで引き上げてきた。これをAuto ISでは数百TBに拡大できるという。
これをさらに引き上げるための方策として、ロスニー氏は“アーキテクチャー”と“オートメーション”というキーワードを挙げた。アーキテクチャーという側面からみると、コンピューター1台1台にストレージを付け、拡張の必要性が生じたときにさらに付け加えるというのはまずいやり方で、ストレージをコンピューターから切り離して1ヵ所に集める“ストレージネットワーキング”が正しいやり方という。そして、そのストレージネットワーキングに、データの再配置や移行をストレージ自身が自動的に行なう“オートメーション”を付け加えたものがAuto ISの考え方とした。ストレージシステムをより簡素に使え、システムの内部に変化があればそれにすぐ対応できるようにしたいのだという。
ロスニー氏は、ストレージを“クラウド(雲)”として捉えるとAuto ISが理解しやすいとした。例えば、東京からマサチューセッツの氏のオフィスに電話をかける際には、間に数々の交換機が介在して複雑なネットワークになっているにもかかわらず、外から見るとただ1つのスイッチがあるように見える。このように、内部手続きを外から見えなくし、複雑な物理システムを持っていても論理的に単純な1つのストレージに抽象化することが、Auto ISの要件の1つ。
ロスニー氏が示した、“ストレージクラウド”の概念 |
もう1つの要件は“データの移行”。データの移行とは、例えばストレージシステム内部のある物理ドライブに書き込まれたデータが、非常によく参照され、その物理ドライブにアクセスが集中するような場合、そのデータをアクセスが集中していない別の物理ドライブに分散して配置するということを指している。Auto ISでは、こうしたデータの移行を自動的かつ透過的に行なえるようにする。
現在EMCが提供する最上位のストレージ製品である『Symmetrix 8000シリーズ』では、小容量の物理ドライブを筐体内に持つが、論理ボリュームとして柔軟に構成することができる。論理ボリュームの物理ドライブへのマッピングでは、自動的なミラーリング機能を備えている。また1つの筐体内に納められたドライブに対するデータの移行もサポートしている。将来は、ネットワークに繋がれたストレージシステム内で、容量の拡張も含めたデータの移行をネットワーク経由で可能にしたいという。
EMCでは、Auto ISが、いっさいのストレージに関する問題を包括的に解決できる方法と考え、のべ数千人規模での開発を進めてきたとしている。Auto ISを実現するための製品(コンポーネント)は、個々の製品のバージョンアップに伴って徐々にリリースする予定で、順次登場するとしている。
大容量ストレージシステムのトップベンダーであるEMCだが、7月に発表した第2四半期決算では前年同期に比べ純利益が4分の1に落ち込み、5月に発表した1100人のリストラをさらに拡大する可能性もあるという。そうした厳しい状況の中でAuto ISという新たなビジョンを提示したことは、今後もストレージシステム市場のリーダーとして積極的に技術革新を行ない、リーダーシップをとり続けるという同社の決意を示したものと言えるだろう。