米モトローラ社、米IBM社、カナダのQNXソフトウェア システムズ社、カナダのeNGENUITY Technologies社の4社は5日、都内で記者発表会を開催し、クルマのドライバー向け情報システム(DIS)(※1)の開発環境を提供する“mobileGT(モバイルジーティー)アライアンス”を結成したと発表した。この発表は東京のほか、米フロリダ州マイアミ(米国時間5日)、独ミュンヘン(ドイツ時間5日)でも行なわれた。
※1 DIS(Driver Infomation System):クルマのドライバーに対して、ナビゲーション情報、インターネットアクセス、エンターテインメントなどさまざまな情報を提供するシステム。米モトローラ、DISマーケティングディレクターのジョン・ハンセン(John Hansen)氏 |
米IBM、組み込みシステム担当副社長のキム・クロヘッシ(Kim Clohessy)氏 |
今回4社が発表したアライアンスは、車載用半導体市場で実績のある米モトローラを中心として、結成したもの。各社はこれまでにDISの共同開発を進めており、米国で昨年開催されたクルマ関連情報システムの展示会“ITS World”などで、開発中のシステムの展示を行なってきた。今回の発表は、フロリダで4日に開幕した“ITS 2001”に合わせたもので、本格的なアライアンスビジネスの開始という位置づけ。
米モトローラ、DISマーケティングコミュニケーションマネージャーのジェームス・ファーレル(James Farrell III)氏 |
QNXソフトウェア システムズ(株)、代表取締役社長のジェフ・ベアー(Jeff Baer)氏 |
mobileGTアライアンスは、モトローラのPowerPCコアを中心としたハードウェアプラットフォーム“mobielGTアーキテクチャー”、その上で動作するQNXのリアルタイムOS“QNX RTOS”、QNXのOSに組み込まれる形で動作するIBMのVisualAge Micro Edition Javaアプリケーションツール“J9 virtual machine”、およびeNGENUITYのGUIの各技術によって、自動車メーカーに対してDIS開発環境を提供するとしている。
mobileGTアーキテクチャーのスタンダード開発プラットフォーム |
mobileGTアライアンスに基づく開発用プラットフォーム『mobileGT MPC823eスタンダード開発プラットフォーム』は2001年の第3四半期に、米メトロワークス社が供給する予定。
新車に搭載されるDISシステムの割合予測 |
このmobileGTシステムがクルマに搭載されることによって、事故時の緊急通報、GPSナビゲーションシステム、インターネット、携帯電話通信、ゲーム、ビデオといったアプリケーションが可能になるという。現在世界で生産される新車の10%がDISを搭載しているが、2006年までに新車の50%、2010年までには90%が搭載するようになるとしており、4社は今後世界の自動車メーカーに対してmobileGTプラットフォームの採用を働きかけていくとしている。
車載向け半導体市場における、各半導体メーカーの市場シェア |
発表会では、「日本ではカーナビゲーションシステムを中心にGISがすでに浸透しつつあるが、どのようにmobileGTアーキテクチャーをアピールするのか」という質問が出たが、「世界市場においては、ナビゲーション機能は必ずしも重視されない地域もある。日本メーカーは世界市場での販売も狙っているはずで、各地域に合わせたDISの迅速な開発のためにはmobielGTアーキテクチャーが有効」と答えていた。
これに関連して、日本の自動車メーカー、カーナビゲーションメーカーなどでも採用の動きがあるということが明らかにされたが、現時点では最終決定していないとして社名は伏せられた。アジア圏では5月中旬に、韓国のヒュンダイ・オートネット社(HACO)がmobileGTアーキテクチャーの採用を決定したというが、今後同様の発表が行なわれるはずとして、含みを残した。4社はすでに実績のあるハードウェア/ソフトウェアを組み合わせることで、開発時間の短縮を武器に、今後急速な伸びが見込まれるDIS市場でのスタンダードを目指す構えだ。