(株)日立製作所は23日、次世代携帯電話方式であるW-CDMAに対応したベースバンドモデムLSIの試作に成功したと発表した。
今回試作したベースバンドモデムLSIは、複数の演算プロセッサーをファームウェアによる制御で並列処理する独自のマルチエンジンアーキテクチャーを特徴とする。ベースバンドモデムLSIをCPUやアナログインタフェースと共に評価基板に搭載し、CPU上のドライバーソフトによりベースバンドモデムLSIを外部から駆動させることにより、W-CDMA方式に求められる高品質音声通話機能や384kbit/秒のデータ通信機能を確認したという。今回試作したモデムLSIでは、ファームウェアで制御することにより、4つのエンジンに同期・変調・復調・誤り訂正の異なる動作を割り当て並列処理を行なった。これにより、W-CDMA方式に必要な変復調信号処理、通信品質を向上させるためのマルチパスRake受信処理、基地局を識別するセルサーチ処理などが行なえ、シングルプロセッサーで行なった場合に比べてクロック周波数を約1/6以下に下げることができ、低電力化を達成したとしている。
マルチパスRake受信処理:マルチパス現象とは、電波が建物などの反射により複数の方向から遅れて届くこと。Rakeとは英語で熊手のことで、ここでは複数方向から届く電波を集めて受信するという意味で用いられている。マルチパスRake受信処理では、直接波や反射波(干渉波)を複数の逆拡散器で個別に受信し、これらの信号の時間を重ね合わせることにより、受信信号強度すなわち通信品質を向上させる。なお、今回試作したモデムLSIは、W-CDMA方式に対応しているが、同技術は現行携帯電話方式や、次世代IMT-2000のもう一つの規格であるcdma2000へも適用が可能という。今後、現行・次世代双方に対応するマルチモード携帯電話を視野に入れ、さらに将来に向けて多種多様な通信方式や無線環境に適応できる柔軟な移動通信システムを目指していくとしている。