Mac OSが8ヵ月ぶりのバージョンアップ
アップルコンピュータ(株)は、15日、Mac OSの最新バージョン『Mac OS 8.5』を発表した。今回の発表は世界同時のもので、メジャーなOSとして、はじめての快挙である。今年2月に登場した前バージョンの『Mac OS 8.1』より8ヵ月を経たバージョンアップとなる。同社のMac OSロードマップで予定されていたとおりの順調なリリースだ。メーカー希望小売価格は1万3800円。発売日ならびに発表にともなう同社の戦略に関しては、本日開催される発表会に関するリポートに譲ることにする。ここでは70を超えるMac OS 8.5日本語版の新機能の中から主な機能を中心に紹介していこう。
見た目には大きな変化はない『Mac OS 8.5日本語版』のインターフェース |
まずは、そのインターフェースだが、見た目で大きな変更はないように見える。しかし、そこにはさまざまな変更が加えられている。例えば、デスクトップピクチャーやウィンドーの表示色に変更を加える“アピアランス”コントロールパネルに、“テーマ”という機能が加わった。この“テーマ”を使ってさまざまなアピアランスファイルを追加することで、デスクトップの雰囲気を一変させることができる。しかし、この点に関する対応は次回の『Mac
OS 8.6』に譲ることになりそうだ。
この他にも、メニューバーにおいて、アプリケーションメニューにアイコンだけではなく、ソフト名を表示することができるようになった点、アプリケーションメニューを切り離してパレット化し、簡単にソフトの切り替えができるようになった点など、さまざまな機能強化が図られている。
さまざまな形でデスクトップの個性化が図れるのはMac OSの大きな特徴と言える。最近のアップルコンピュータは“よい技術”は取り入れる傾向にあるが、ウィンドーのスクロールバーがWindowsのものと同様の“スマートスクロール”に切り替えることができるようになったのもその表れだろうか |
インターネットにフォーカスした検索機能“Sherlock”
数々の新機能を搭載した『Mac OS 8.5日本語版』だが、最大の特徴はなんといっても検索アプリケーション“Sherlock(シャーロック)”だろう。Sherlockでは、従来の“ファイル検索”に加え、“内容で検索”が設けられた。“内容で検索”ではファイル形式にかかわらず文書の中身が検索できる。最も特徴的なのは“インターネット検索”だ。“インターネット検索”を使えば、ブラウザーを立ち上げずに、Altavista、Excite、Infoseek、Lycosといった日本語に対応した検索サイトにダイレクトにアクセスして検索できる。検索では、自然語による複数検索が可能になった。システムに組み込まれた強力な言語解析アーキテクチャーによって、実現されたという。
普段使っている言葉をそのまま入力することによって検索できる |
この言語解析アーキテクチャーは、検索のほかにもさまざまな機能を『Mac
OS 8.5日本語版』にもたらしている。例えば、テキストファイルを“control”キーを押しながらクリックすると、コンテクストメニューを表示する。その中の「要約をクリップボードで表示」を選択すると、そのテキストファイルの内容を要約して、クリップボードに表示するのだ。
大量の文書に目を通さなければならない忙しいビジネスマンにとって、作業の効率化をサポートしてくれる心強い機能といえる。
文字量に関わらず要約するので、長文を読むのにもよいだろう(画像は合成したもの) |
Windows NTを上回るネットワークパフォーマンス
ネットワークに関しては、PowerPCへの最適化がさらに進み、特にEthernetにおいて大幅な機能強化がなされた。PowerMac G3 MT333とWindows NT搭載マシン(Pentium II-400MHz)とで200MBのファイル転送を行なったという、アップルコンピュータの発表したテストがある。これによれば、Windows NTで約40秒だったのに対して、『Mac OS 8.5』のPowerMac G3では約21秒という結果が出ている。
この数値が信ずるべきものだったとしても、ネットワーク環境はそれぞれの環境によって微妙に異なるもので、一慨にどちらの環境が優れているとは明言できない。しかし、少なくともこれで「Macのネットワーク環境は使い物にならない」という認識は大いに改められなければならなくなるだろう。
パブリッシングには欠かせないものに成長したAppleScript
AppleScriptは今回、PowerPCに最適化されたことで格段にパフォーマンスが上がった。このAppleScriptには、フォルダーにAppleScriptを付加するという新機能“フォルダアクション”が加わった。“フォルダアクション”は、どのようなフォルダーにも貼りつけることが可能で、“開く”、“閉じる”、“加える”、“除く”、“移動する”、“サイズを変える”といったことに反応する。
先日の“World PC Expo '98”で、米アップル・コンピュータ社のフィリップ・シラー氏の講演でも、この機能を紹介していた。あらかじめ用意された“Create”、“Convert”、“Catalog”という3つの“フォルダアクション”を使うというものだった。
あらかじめ用意されたQuarkXPressのファイルとPhotoshopのイメージデータを“Create”フォルダーに放り込むと、それぞれのソフトが起動、連動して、自動レイアウトを瞬時に実行した。さらに“Convert”フォルダーでは、イメージデータをリサイズして、QuarkXPressのデータをHTMLに変換し、“Catalog”フォルダーでは、イメージデータベースソフトでカタログ化してみせた。
パブリッシングにおいては、すでに活用されているAppleScriptだが、今回の最適化と“フォルダアクション”でさらに欠かせないものになったといえるだろう。
“control+クリック”でコンテクストメニューから“フォルダアクションをつける...”を選択すれば簡単に貼りつけることができる。右はフォルダーアクションが貼りつけられたフォルダー。バッジと呼ばれる小さなAppleScriptのアイコンがフォルダーについている |
QuickTime 3 Proが標準に
インターネット環境については、新機能の“インターネット”コントロールパネルで一括して設定できるようになった。これにより、メールソフトやWebブラウザーなどを個々に設定する必要がなくなった。インターネットには欠かせないQuickTimeについても進展がある。以前は機能を拡張した“QuickTime 3 Pro”が有料の登録制だったが、『Mac OS 8.5』から、その料金が価格に含まれることになった。同梱はされていないが、後からインターネットを介して登録することで、使用できるようになる。
また、メールアドレスやWebのURLをドラッグ&ドロップするだけでアイコン化できるようになる。ダブルクリックするだけで、メール準備をしたり、そのWebにアクセスしたりできる。これを数多く用意してブックマークのように使うこともできるだろう。
他には、システム時計を正確に合わせるための機能がある。“日付&時刻”コントロールパネルの“サーバオプション”で、原子時計とリンクさせたネットワークタイムサーバーと同期が図れる。
インターネットエイリアスでは、ここに紹介したメールアドレス、WebのURL以外にFTPやネットワ-クサーバーなどもアイコン化できる |
Mac OSはさらに“ネットワークサビー”なOSへ
ここでは、Mac OSの機能をほんの少し紹介したまでである。ハイパーテキストを使って新しくなった“ヘルプシステム”やさらに簡単になったインストール方法など、切りがないほどの新機能が盛り込まれている。そうした細かな新機能などについて、筆者(千葉)は、今後発売されるアスキーの『Mac Power』誌、『Mac People』誌を参照することをお薦めする。
一通り見くるとSherlockだけではなくインターネットに関わる機能がたびたび出てくる。これは今に始まったことではないが、今回の『Mac OS 8.5』でその部分がさらに強調されることになったといえる。Mac OSはますます本来の意味での“ネットワークサビー”な(Network Savvy=ネットワークを熟知している)OSに進化してきているようだ。
-
【動作環境】●PowerPCプロセッサを搭載したMac OSで動作するアップルコンピュータ社製コンピューター。24MB以上のメモリー(推奨32MB以上)。ハードディスクの空き容量は200~250MB(機種によって異なる)。●Mac OS 8.5は、アップルコンピュータのPC Compatibiltyカードには対応していない。