通産省の地方事務所である関東通商産業局は、東京・大手町で11日、“‘総合経済対策’におけるベンチャー企業等関連施策説明会”と題して会合を実施した。ベンチャーキャピタル大手のジャフコが基調講演を実施。通産省新規産業課、中小企業庁計画課、産業基盤整備資金の新規事業課が講演した。出席者は200人前後と見受けられた。
出席したベンチャー企業相手のあるコンサルタントは「こうした会合は、あまり例がない。通産省、中小企業庁も、ベンチャー施策にようやく本気になってきたのだろう」と評価していた。
佐野睦典氏 |
まず、(株)ジャフコの投資企画グループゼネラルマネージャーの佐野睦典氏が“魅力あるベンチャー企業の条件”と題して基調講演を行なった。佐野氏はまず、金融、特に中小企業を相手とする金融の使命が、中堅企業への投資から、新規産業および新規産業の創出に移ってきているという認識を示した。
ジャフコもその流れの中にあり、起業家精神が旺盛で、創業率の高い米国、欧州、イスラエルへの投資が増えてきていると述べた。また日本も含め、オーナー企業や大企業が、新規事業の事業部や関連会社を、積極的に独立させて活動させる、いわゆるマネジメントバイアウトが活発化していると指摘した。独立の中でも最近注目されるのは、研究部門のスピンアウトだという。例えば研究テーマが10あったとき、6つ、7つは大企業の中の採算で評価され、採用されない。これを外に出せば、数人のベンチャー企業ならビジネスになるということで買い手がつく可能性が十分にある。
ジャフコでもこうした動きを取り入れ、技術提携ビジネスに対して投資するという新たな金融商品を開発している。北大や筑波との連携ファンドである。いずれもそれらの組織との技術提携がビジネスになれば、リターンが得られる。筑波のものは、筑波大、工業技術院など国立の研究所との技術提携が対象になる。
佐野氏はまた、ベンチャー企業の成長の条件として、(1)新産業トレンドを捉える、(2)独自の事業ドメインを構築する、(3)事業計画による外部資源への訴求、(4)マネジメントチームとエンジェルの存在、(5)市場主義と人間主義による人材活用、(6)緻密なマネジメントコントロール、(7)情熱とリーダーシップ--の7点をあげた。
その中で、事業計画の書き方を指導したり、独自の切り口を磨いたりすることの大切さと、ベンチャーキャピタルの関与の仕方について述べた。
次に、通商産業省産業政策局新規産業課が、新規産業創出のための総合的施策、ベンチャーキャピタリストの海外、国内の研修促進事業、、シニアベンチャーアドバイザー制度、ベンチャー企業支援期間連絡会議、今後の店頭市場のあり方、アントレプレナー教育研究会などについて解説した。
このうち、情報産業を主な対象にした平成10年度の施策をリスト1として列挙した。
このほか、中小企業庁計画部計画課、産業基盤整備資金の新規事業課などが、それぞれの施策について解説した。
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●情報産業を主な対象にした平成10年度の施策(カッコ内は予算規模、[ ]内は出資団体)
- ソフトウェアベンチャーに対する債務保証の強化(30億円[IPA])ソフトウェアベンチャー育成のための次世代デジタル応用基盤技術開発(210億円[IPA])先導的コンテンツ市場環境整備事業(75億円[IPA])教育の情報化の加速(150億円[IPA])医療福祉の情報化(30億円[IPA])電子商取引の実用化支援(500億円[IPA])デジタルコミュニティー支援事業(60億円[IPA、自治体補助])次世代地理情報システムモデル事業(30億円[IPA])高度道路交通システムの走行最適化システム技術の実証実験(10億円[NEDO])電子デバイス基盤技術の開発(60億円[NEDO])ロボットの高臨場感遠隔操作システムの開発(2億円[NEDO])関東通商産業局
- 通商産業省産業政策局新規産業課TEL.03-3501-1569中小企業庁計画部計画課 産業基盤整備資金の新規事業課TEL.03-3241-6283