デジタルクリエーターを目指す人のためのスクール、Digital
Hollywood
の東京、横浜、大阪各校では、マルチメディア業界の一線で活躍するクリエイターを招いて、定期的に講演会を開催している。今回、8月1日の横浜校で演壇に立ったのは、同校のUSA校であるDHIMA(Digital
Hollywood of Media Art:通称ディーマ)で教育部門を統括しているクリス・エッカート氏と取締役の鶴谷武親氏。ハリウッドCG業界の最新情報や、現地での卒業生の活躍、就職状況などについて熱く語った。
鶴谷武親氏(左)と、クリス・エッカート氏(右) |
アメリカのサンタモニカにあるDHIMAでは、現在日本人生徒だけでなく、アメリカ人や他国の生徒も多く学んでいる。鶴谷氏は「映画『タイタニック』の特殊効果に携わった人や、アメリカで人気のテレビ番組『サウスパーク』の製作者なども、最新の技術を学びに通ってきています」と、現地に溶け込んでいるDHIMAの状況を説明した。
この7月アメリカのオーランドで開催されたCGの世界的なイベント“SIGGRAPH
98”(http://www.siggraph.org/s98/)についてエッカート氏が報告。同イベントで発表された作品を解説した。ジョージ・ルーカスのILM(Industrial Light and Magic)社が制作したゲーム用のCGや、特殊効果用ソフトの機能を活用したCGを上映しながら「これからのCGでは、実写とCGとの合成が主流になる。その流れに対応するには、より多くのソフトに精通していることが必要になる」と語った。
ILM社制作のゲーム用CG。微妙なタッチのCGだ |
また、エッカート氏は、CGアニメーションの制作過程における日本とアメリカとの違いを詳説した。題材にしたのは、PIXAR社による映画『TOY
STORY』の制作過程を記録したビデオ。特に日本と異なっているのは、絵コンテを作るだけでなく、その絵コンテを使ったアニメーション(ストーリーボードと言う)を作る点である。アドビ社のPremierなどの編集ソフトを使い、音声をつけて絵コンテを動かしてみるのだ。これにより、動かすタイミングを見ることができる。『TOY
STORY』などでは、ストーリーボードと実際に公開された映画とを比べても、ほとんど差がないくらいに完成されている。「ストーリーボードを作ることで、結果的に作業時間が短縮されるのです」とのことだった。
『TOY STORY』のキャラクターのラフデザイン |
同じく『TOY STORY』キャラクターの初期の粘土モデル |
最近のハリウッドCG業界の動向について鶴谷氏がビビッドに解説する。「『タイタニック』などの大作になると、特殊効果の部分に関わる会社は大小含めて100社以上。デジタルドメイン社などの大きな会社だけでなく、マンションの一室を会社にしているような小さな会社が大作を支えている。最近ではWindows
NTマシンがどんどん導入されている。今までのSGIのINDYのような器材に比べ、WIndows
NTマシンは格段に安い。少ない資金で良い仕事をしている小さな会社が、どんどん出てきている。業界のトレンドはWindows
NTへと移行しつつあるのかもしれない」と、映画『タイタニック』で変化しつつある業界の今を語った。