“インターネット社会の消費者をどうとらえるか”をテーマにシンクタンクの文化科学研究所(旧ぴあ総合研究所)などが主催の「NetCityビジネススクール
'97」の第9回セミナーが行なわれた。
オンライン会議の発言から数値的に人間関係をとらえる
立教大学社会学部産業関係学科の安田雪助教授らは、オンライン会議について実験を行なった。2月の5日間、インターネットを日常的に利用している20代~30代の10人を1グループとして男女別で計2グループを設け、“インターネットのある暮らし”について、メーリングリストを用いて非同期で語り合うというもの。
分析した結果、男性より女性のほうが発言数が1.74倍多く、ひとつの発言も長かった。また司会役が提起したテーマ以外のことを自由に発言したり、他者に共鳴したレスポンスを返すのも女性に多く見られたという。また個々の発言数やその発言に対するレスポンスの数(発言誘致数)などから、誰がその会議室で中心的な人物か、その中心人物に近いナンバー2、3は誰かというのが、数式から導けるという。
その結果、女性はわきあいあいとした井戸端会議ふう、男性は、中心人物に競合する形で発言するナンバー2がいて、ある種の“競争”が起こっているというのが数字的にわかった。派閥の存在なども解析でき、ビジネスでもさまざまな分野に応用できる可能性があるという。
プラットフォーム・ビジネスの可能性
また慶応大学大学院経営管理研究科の國領二郎助教授は、ネットワーク上のユーザー間コミュニケーションの“顧客間インタラクション”について語った。これは爆発的なヒットを引き起こす可能性があるという。その例として、発売当時英語版のみだった日本ヒューレット・パッカード(株)のPDA『HP
200LX』用に、ユーザーがフリーウェアとして日本語版を開発して爆発的に売れたことやユーザーに性能改善を競わせ、レースを開催することでブームになったミニ四駆などを挙げた。顧客間インタラクションを引き起こすには、ユーザーがその商品に対して工夫を盛り込めたり、他のユーザーと共通の話題でコミュニケーションができたりすることがポイントという。
またこれを応用した“プラットフォーム・ビジネス”の可能性についても言及した。電子市場において、たとえば、ショッピングモールは従来売る側と買う側という役割が固定されているが、誰もが売り手になれ、誰もが買い手にもなれる場を提供し、管理手数料のようなものを徴収して、ビジネスに結びつけるというもの。
今年度最後のセミナーを迎え、同スクールプロデューサーの校條諭(めんじょうさとし)氏は、「(インターネットを利用するための)環境が整ってきて、どんなコンテンツでどう楽しむかという新しいビジョンが今後、必要」とまとめた。(報道局 若名麻里)
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