LaTeX2e美文書作成入門 |
発行(株)技術評論社(http://www.gihyo.co.jp/)
第18回で「Linux論文作成術」をLaTeXのことが書かれていると思って選択したのですが、予想を大きく外した内容でしたので、今回はLaTeXを使い込んでみたいという人向けの本を選んでみました。LaTeXの本は、一般向けの本から、特定の専門分野向けの論文(たとえば化学とか)を書くための解説書まで種々あり、本の選択に困る分野でしょう。
LaTeXは、Windows、Macintosh、UNIXなどさまざまなOSの上で動きます。本書ではOSに関係する部分についてはDOSとUNIXの両方について説明しています。Linuxだけにしか興味のない人にはちょっとわずらわしさもありますが、同じ本でWindowsの人にも説明できるので、便利な点もあります。
TeXやLateXのことを全然知らなくてもわかるように、最初はかなり丁寧に書かれていますが、読み進んでいくと、TeXやLateXの専門用語が何の説明もなしに出てくることが多くなります。確かにいちいち丁寧に説明を加えるといいのですが、とても分厚い本になってしまいます。理由はともかく、「とりあえず美しいレイアウトの出力が得られるように」という方針で書かれています。きっちり理解しながら読み進まないと気がすまない人には困った書き方ですが、昔使ったことがあるけれども忘れてしまったので思い出したい人とか、とにかく使ってみて覚えるような人にはとても向いている本でしょう。
本書は、書名にもあるように、日本語の美しい文書のレイアウトを目指しているので、日本語と英語の文章の違いについての説明は随所にあります。細かい間隔の調整方法や、本書のために特別に作ったクラスファイルが用意されており、それを使うことで、日本語独特のレイアウトにすることも可能でしょう。
LateXの説明を行なうのに、どうしても印刷や編集の用語が出てきます。これらもあまり説明されていませんので、とまどうかもしれません。しかし、ここに出てくる印刷や編集の用語は出版関係で一般によく使われているものですから、編集者用の本などで勉強すれば簡単に分かることばかりですので、慣れてしまいましょう。
本書はとりあえず美しいレイアウトされたドキュメントを出せるようになるレベルまでの入門書です。実際に本1冊をLaTeXで作成しようとすると、もっともっと知識が必要になります。もっと詳しく勉強したい人には、次の2冊がたいへん役に立つでしょう。これらの本は、読破するといういより、詳しい解説が必要なときに参照するようなタイプの本ですが、LaTeXをやるならぜひ備えておきたい本です。
- 「The LaTeX コンパニオン」Michel Goossens、Frank Mittelbech、Alexander Samarin著、アスキー監訳 アスキー 4800円
- 「LaTex グラフィックス コンパニオン TexとPostScriptによる図解表現テクニック」Michel Goosens、Sebastian Rahtz、Frank Mittelbach著、鷺谷好輝訳 アスキー 5400円