第5回のゲストは、株式会社ソウゾウのデザイナー三橋正典さん。人気アプリ「メルカリ アッテ」のデザインに携わる三橋さんに、これまでのキャリアとお気に入りのアイテムについてお話いただきました。
建築からWebデザインの道へ進んだ意外なきっかけ
小島 今回のゲストは最近、ソウゾウに転職された三橋さんです。
三橋 ソウゾウでデザイナーをしている三橋です。よろしくお願いします。
小島 三橋さんのキャリアのお話の前に、学生時代のことから聞いちゃいましょう。大学ではどんな勉強を?
三橋 いつも「建築をやっていました」と言っているんですけど、本当はですね……。
小島 え? ウソついていたんですか(笑)。
三橋 いやいや、ウソではないんですけど、大学ではいわゆる建築学科から想像される「建物」ではなく、景観デザインについて研究していたんです。とはいえ、建築事務所でアルバイトをしたりして、建築にかかわることも多かったですけど。
大学を出てからはWeb制作会社に入って、いわゆる広告系のWebサイトを作っていました。
小島 なぜWeb制作会社に?
三橋 たまたま学生時代にアルバイトをしていた建築事務所に、一時期、中村勇吾さん(※)が間借りしていたらしいんです。僕がいたときには勇吾さんはすでに出た後だったんですけど、その事務所が駅の建築を手がけたときに、勇吾さんがWebプロモーションを担当したそうで。
そういった外から建築に関わる仕事、建築を広める仕事もあるんだと思って、Webもおもしろそうだと考えたんですね。で、建築の道には進まずに、Webの世界へ行きました。
小島 結局、勇吾さんには会えたんですか?
三橋 「前にここにいたんだよ」っていう話を聞いただけです。
小島 お会いしてみたい!
三橋 ですよね。僕自身、当時かなり影響されたと思います。なので、最初に就職した会社も広告系、Webを使ってプロモーションをする会社でした。
小島 Webについては会社に入ってから勉強したんですか?
三橋 未経験だったので1年間ぐらい自分で勉強したり、Webサイトを作ったりしてから面接を受けました。当時はFlashが流行っていたので、ポートフォリオサイトをFlashで作って「ActionScript書けますよ」とアピールしてみたり。
小島 で、入社した事務所でも勉強したり、仕事をしたりして。そのあとは?
三橋 グッドパッチに転職しました。最初の会社では3年ぐらい働いたんですけど、広告系のサイトってどうしてもリリースから1カ月ぐらいで閉じることが多くて。もっとみんなに使ってもらえるものに携わりたいなと思っていたんです。
ちょうどスマートフォンアプリが流行って、UIデザインという言葉が一般的になってきたときに、グッドパッチの面接を受けました。そのときもUIデザインの実績はなかったので、コンペに出したりして、準備して臨みましたね(当時コンペに出した作品)。
小島 で、そのあとが現在のソウゾウですよね。ソウゾウではどんなお仕事を?
三橋 「メルカリ アッテ」(※)のデザインを担当しています。メルカリ アッテにはアプリとWebがあるんですけど、僕はいまWebチームでデザイナーをしています。Webはアプリのインストール流入を増やすのが主な役割ですね。
小島 では、現在のお仕事としては、Web版のUIを改修したり、機能を追加したり、といった感じですか?
三橋 そうですね。特にいまは機能追加に取り組んでいます。
週に一度のソウゾウランチで社内交流も
小島 三橋さんの1日の生活リズムについてお聞きしたいのですが、朝は何時ぐらいに出社していますか?
三橋 最近は早起きして、早ければ8時半には出社しています。
小島 はやっ(笑)。
三橋 最近わかったのは、朝のほうが調子がいい、ということですね。最初は10時ぐらいに出社していたんですけど、もうちょっと早く来てみようかなと思って。
小島 会社として決まっている出社時間は?
三橋 コアタイムが12時から17時で、その前後を含む実働8時間のフレックスです。
小島 じゃあ8時半に来たら…?
三橋 17時半には帰れますね。といっても、僕も毎朝8時半に来ているわけではなくて、8時半から9時の間ぐらいにゆるりと来る感じで。
小島 朝食は自宅で?
三橋 軽く食べてから出社しています。出社したら午前中はタスクをこなして、コアタイムが始まる12時ごろにチームでミーティングしてから昼食を食べる、といった感じですね。
小島 六本木だとお昼は困るでしょ?
三橋 困りますね。前職は渋谷のはずれだったんで、安いお店も多かったんですけど、六本木は……。
小島 毎日2000円のランチを食べて。
三橋 そんなには高くないですよ(笑)。探せば安いところもありますし、毎週水曜日は「ソウゾウランチ」という社内イベントがあって、ケータリングが来てくれるんです。ソウゾウもいまでは社員50人ぐらいの規模になっているので、普段の仕事だけでは話をしない人もいる。そこで、ソウゾウランチではメンバーをシャッフルして、みんなでお昼を食べながら交流しています。
小島 社員食堂はないんですね?
三橋 ないですね。
(広報・大塚さん) メルカリの福利厚生はネガティブなものを相殺しようというのが多くて。例えば育児休暇だったり、生命保険だったりはカバーするんですけど、食事や住宅の手当はなくて、それよりも給料に反映させたほうがうれしいでしょう、という考え方なんですよ。
小島 ご説明ありがとうございます。正確な情報が聞けてよかった!
で、お昼を食べて、またミーティングしたり作業したり?
三橋 そうですね。エンジニアさんに相談しながらタスクをこなしていきます。アジャイル開発の手法を採っているので、そのサイクルをくるくる回していく感じですね。
「そもそもなぜ?」を考えるのが好き
小島 ここからは、仕事とは関係ない趣味の話、普段の生活について聞かせてください。この連載では、いつもみなさんに普段持ち歩いているモノ、お気に入りのモノを見せてもらっていますが、今日持ってきていただいたものは?
三橋 いろいろ持ってきたので、一番おもしろかったものを採用してほしいんですけど……。
小島 全部採用します(笑)。
三橋 まずはいつも使っているマグカップです。最近買ったんですけど、これがとても使いやすくて。スノーピーク(※)製なんですけど、がちゃがちゃ使えるというか、傷ついてもいい、無骨さがすごくいいんです。
小島 乱暴に扱っても壊れないから安心だと。
三橋 そうですね。アウトドア仕様なので。
小島 コーヒー入れたら熱くなりませんか? 特殊な素材を使っているのかな。
三橋 いや、ほとんど熱くならないですよ。素材はチタンなので、そのせいかな。
小島 次は名刺入れですね。こだわりのポイントは?
三橋 「FIVE」というブランドの、富山の五箇山の和紙で作られたもので、もともと質感があるものが好きなこともあり、気に入って使っています。だいぶ使い込んでいるので、はげてきちゃったりしているんですけど、耐久性があって、触り心地もいい。ただ、写真で見るとかなり汚い(笑)。
小島 続いては、服ですね。ファッションのコーナーです。
三橋 いま着ているこの服、ジッパーだらけの服なんですけど。
小島 全部開けるとどうなるんですか?
三橋 えらいことになりますね。
一同 (笑)
小島 こだわりのポイントは?
三橋 meanswhile(ミーンズワイル)というブランドの服なんですけど、見た目というよりも、考え方、コンセプトがおもしろくて。服のデザインって、形とかルールとか、実はいろいろと決まっているじゃないですか。それを一度、考え直してみたらどうなるか、というコンセプトがこの「ループジップ」という服なんです。
小島 かなり実験的な服なんですね。
三橋 meanswhileのコンセプトが「身体に最も近い道具」「デザインは目的ではなく手段」というものなんですが、この服はそれを体現しているような、「体に近い道具ってそもそもどんなものだろうか」と考え直して作ったものだと僕は理解しています。「これってなぜこうなっているんだろう?」と考えるのは僕も好きなので。
小島 着心地はどうですか?
三橋 いいですよ。ゆったりしているので、作業着としてはすごく楽です。
小島 ゆったりしているけど、ほかのゆったりした服みたいに、ぼわっとした感じには見えないのがいいですね。エプロンみたいに広がっちゃうのかなと思ったけど。
三橋 広げることもできますけど。あと、暑かったらもう開ければいいし、みたいな。
小島 なるほど。
(後編に続く)
[撮影:後藤利江]
KEYWORD
- 中村勇吾(↑)
- Webデザイナー、インターフェイスデザイナー、映像ディレクター。2004年にtha ltd.を設立、Flash全盛時代に手がけた数々のインタラクティブデザインが話題になった。
- メルカリ アッテ(↑)
- ソウゾウが開発・提供している地域コミュニティに特化したCtoCアプリ。自分の周りの地域にいるユーザーと、不要品の売買やスキル・サービスの取引、仲間募集などを無料で行うことができる。https://www.mercariatte.com/jp/
- スノーピーク(↑)
- 登山用品、キャンプ用品などを手がけるアウトドアメーカー。新潟県三条市に本社を置き、国産アウトドアブランドとして人気がある。
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