「Webの技術でデスクトップアプリが作れる」プラットフォームとして登場した、Adobe AIR。だが、それだけではなかった! 正式版登場から約1年。1月29日に東京・台場で開催された「Adobe MAX Japan 2009」の基調講演で披露されたデモは、「こんなものまでAIRで作れるのか」と可能性の高さを感じさせてくれるものだった。
ケータイアプリもAIRになる!?
「AIR? デスクトップガジェット作れるってヤツだよね?」
もし、AIRに対してそんなイメージを持ってるのなら、まずは下の写真を見てほしい。Adobe MAX Japan 2009基調講演で米アドビ システムズCTO兼エクスペリエンス&テクノロジー部門担当上級副社長のケビン・リンチ氏、それにNTTドコモ執行役員プロダクト部長の永田清人氏が披露したデモだ。
写真のとおり、AIRアプリが動いているのは、なんとタッチパネルのケータイ。撮影した写真を自由に配置してオンラインフォトアルバムを作れるアプリケーションだ。Flashで作られた見た目にも楽しいUIは、ドラッグ&ドロップで写真をつかんで直感的にレイアウトできる簡単操作を実現。さらに面白いのは、PC向けのAIRアプリとも連携することだ。
ケータイ側でアルバムを更新すると、同様のUIを持つPC版のアプリも“すぐさま”表示が切り替わり、同じアルバムが表示される(もちろん逆でも可)。「ちょっとこの写真を見てよ」なんて他人に伝えたいときには、ケータイ/PCのどちらかで拡大操作をすると、別のデバイスでもそれに追随して表示が変わる。AIRの特徴のひとつであるプッシュ配信機能を利用し、異なるデバイス間でもほぼリアルタイムの同期が可能なのだ。
これだけではない。ドコモとアドビは、ケータイでのAIRのさまざまな使い道を考えている。たとえばゲーム。現段階ではあくまでも“イメージ”にしかすぎないが、OSを問わず同じアプリケーションを「移植なし」で動かせるAIRなら、WindowsとMac、それにケータイやゲーム機とが同時に対戦型ゲームをプレイする、といったことも簡単に可能になる。OSやハードウェアの違いはAIRが吸収してくれるので、開発側の負担は少ない。しかも、クライアント側の実装に必要なのは、Flash/Flex(ActionScript)やJavaScriptといった、Webの技術だ。
“ケータイアプリ”といえばiアプリのようにJavaが主流で、“ケータイサイト”にしてもキャリアや端末によって微妙に異なる仕様に対応するなどの手間がある。そのため、PC向けのWebアプリやサイトを作っていた開発者・制作者が、いきなりケータイ向けを作るのはやや敷居が高い。これまで参入が難しかったPC向けWebの開発者・制作者にとって、自分のスキルが通用するAIRがケータイで動く、というのは魅力的なはずだ。
なお、ケータイ向けAIRランタイムの提供時期は、現段階では未定だ。アドビはOpen Screen Projectで、近い将来、PC向けの「Flash Player」とケータイ向けの「Flash Lite」を統合し、Flashのランタイムを一本化することを目指している。ケータイ版AIRの登場に関してはその統合が済んでから、ということになるだろう。また、ドコモも具体的にいつから、どの端末で対応するかは未定という。ただ、「既存のiアプリがなくなるわけではなく、用途によって使い分ける方向で考えている」(ドコモ担当者)ことは確かなようだ。