今年のモバイルの潮流は、間違いなく「小型で低価格」にある。そして今年後半、台風の目になるのがインテルの「Atomプロセッサー」だ。処理能力よりも低消費電力と低発熱、そして生産コストの低さに重点を置いたCPUで、従来のPC用CPUとは趣が異なる。
今回試用する工人舎の「SC」シリーズ(関連記事1)は、同社お得意の低価格・小型ノートに、Atomを搭載した新製品である。今後のAtom搭載機の水準を探る意味でも、非常に興味深い製品だ。その使用感をチェックしてみよう。なお、今回の使用機材は開発途上版であるため、ベンチマーク計測は行なっていない。
完成度の上がった「ビュアー型PC」
キーは小さいが「タッチパネル」でカバー
SCシリーズはシステム手帳とほぼ同じ大きさの、俗に言うUMPCクラスのモバイルノートである。同社の「SAシリーズ」(関連記事2)よりも小さい。7インチのワイド液晶ディスプレーを採用しているが、解像度は1024×600ドットと比較的高く、使用時にも「画面の狭さ」はさほど感じない。
本体サイズは、幅189×奥行き155×高さ25.4~33mm。このサイズのボディー内にワンセグチューナーが入り、さらに最上位機種ではGPSユニットまで内蔵している。なお今回試用したのは、GPSを搭載しないローエンドモデルである。
このようなサイズなので、キートップはかなり小さい。キーピッチは14.2mmとされているが、キートップはさらに一回り小さく、まるでノートPCのミニチュアのようだ。
ただし、キータッチは意外と悪くない。このクラスのノートPCと言えばキー底面がたわみ気味で、キートップもぐらぐらして打ちにくいものが多いのだが、SCシリーズはそんなことはない。両端のキーの幅が小さいので、ミスタッチはどうしても多くなりがちだが、致し方ないところだろう。
元々SCシリーズは、大量の文字入力を行なう「プロダクティビティー型」の用途よりも、ウェブブラウズや映像/音楽などのコンテンツを視聴する「ビュアー型」の用途を指向した製品である。そのために、ディスプレー部を回転させてタブレットとして使う機構も備える。
タブレット状態では、狭い電車や飛行機の席でも、両手で持って再生がしやすい。また、操作性を上げるために、ディスプレーには感圧式のタッチパネルが組み込まれている。ポインティングデバイスとして使えるのはもちろんだが、Vistaには標準でタブレットPCとしての機能が組み込まれているので、文字入力にも十分使える。
タブレットPCは使ったことのない方のほうが多いので不信感も根強いようだが、文字認識精度や速度において、Vistaの手書き文字入力機能は十分に「快適」なレベルだ。
SCシリーズは全体として作りがこなれており、使いやすさ、操作性ともに良好だった。いわゆるUMPCに共通する点だが、同社の初期の製品は、キーボードやディスプレーヒンジのできなどで「厳しいな」と感じることもあった。しかし、ノウハウが蓄積されたこともあるのか、SCシリーズに関してはむしろ「手堅く安定した製品」という印象を受けた。
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