これまで「長く使えるケース」をテーマに、代表的ケースメーカー(アビー/クーラーマスター/サーマルティク/アンテック)のイチオシ製品を紹介してきた。おかげでケースを見る目が肥えてきたのはいいが、ふと自分の部屋を見るとハイエンドケースの置き場所なんかどこにもない……という人もいるかもしれない。現状のハイエンドケースは水冷・空冷含めた冷却能力の高さと拡張性を伸ばす方向にあるだけに、どうしてもコンパクトさは犠牲にならざるを得ない(その点アンテックの「Mini P180」は新鮮だったといえる)。
そこで、今回紹介する「ユニティ」編では、これまであえてスルーしてきた「スモールファクター」なケースにスポットライトを当ててみた。拡張性の高いATXだけが自作PCじゃない。Mini-ITXやNano-ITXのような“超小型”なものだって熱いのだ!
Mini-ITXって何だ?
さて、実際のケースのチェックを行なう前に「Mini-ITX」って何だ? という人のための理論武装を行なっておきたい。以前当サイト「アキバで恥をかかないための最新パーツ事情(マザー編)」でも解説した通り、現状自作PCというと「ATX」が主力だ。さらに小さいマザーとなると拡張スロットを減らした「Micro ATX」があるが、もっと小ささが欲しいという人のために生まれたのが「Mini-ITX」「Pico-ITX」「Nano-ITX」の3種類のフォームファクターだ。
Mini-ITX以下3つのフォームファクターの特長を簡単にまとめると以下のようになる。
そして何よりも重要なのは「CPUの選択肢が限られている」という点が重要だ。Mini-ITX以下のマザーでは、VIA製の「C7」やその後継である「EDEN」や「Luke」といったCPUを“マザー上に直接”実装しているため、CPUをあれこれ選ぶことはまず不可能だ。
また、C7を始めとするVIA製CPUは消費電力が低いため小型ケースには最適のチョイスなのだが、お世辞にも性能は高いといえないことも忘れてはいけない。メールやウェブが使えれば事足りる作業や、サーバー的な用途でなら利用できるが、クリエイティブな作業や3Dゲームなどもっての他だ。
無論、Mini-ITXでもSocket AM2やLGA 775のCPUを装着できるマザーも存在するが、価格や入手性に難があるものが多い。CPUクーラーも大型化してしまうため、超小型ケースは諦めねばならない場合も多い。
さらに、小さいフォームファクターやケースを志向すればするほど、パーツ選びはどんどんシビアになってくるという点も見逃せない。ケースが小さいだけに高発熱なパーツは使えない(使いにくい)うえに、通常の自作PCで使う規格のパーツが利用できないことも多い。メモリーはノート用のSO-DIMMを利用したり、HDDは2.5インチでないと入らないケースはごく当たり前になる。
……と、このようにまとめると小型PCを使う意義がほとんどないように思えてくるかもしれないが、余分な機能をそぎ落としたマシンは組む・所有するだけでもかなり楽しいものだ。CPUが低発熱なのに加え電源ユニットもACアダプターが主になるため、静音性も高くなる。もちろんCPUに「C7」が嫌ならノート用の「Core 2 Duo」を搭載可能なマザーを“足で探して”みたり、HDDのかわりにSSDを搭載してみたり、USBメモリーに入るLinuxで運用してみたりといったマニアックな面での楽しみもある。変わったサブマシンが欲しい人なら、ぜひとも一度試して欲しい。
以上がMini-ITX等のスモールフォームファクターを使うための基礎知識と覚悟になる。それでは実際のケースをチェックすることにしよう!
スッキリとスマートに組む!
PROCASE-mini CrysTa
作業時間:15分
まず手始めにMini-ITXマザー用の「PROCASE-mini CrysTa」を紹介しよう。大きさは21cm×6.5cm×27.5cm(それぞれお縦置き時のタテ、ヨコ、奥行き)。ちょっと厚めの漫画雑誌を想像してもらえるとわかりやすいだろう。
薄型設計であるため光学ドライブはノート用薄型、HDDは2.5インチに限定されてしまう。本体の厚み半分程度はドライブベイ用に取られてしまうため、このマザーは実質的にVIAのC7等を搭載した「EPIA」「EPIA-M」ファミリーのマザー専用と考えた方がよいだろう。
冷却ファンの寿命次第?
Mini-ITX用としては現時点で最小の部類に入るが、組み立てのしやすさは非常に優れている。唯一光学ドライブのケーブル回しが難所だが、光学ドライブを内蔵しない(外付けで代用する)という選択をすればものの10分ほどで作業が終わってしまうだろう。
使っていて特に不満点はないのだが、ちょっと心配なのはケースに1基だけ搭載されている排気ファンの存在。特別騒々しいというわけではないが、やはり1基だけでは何かあった時に不安が残る。特にこれを常時起動のサーバー的マシンに仕立てる場合は、2基めのファンが欲しくなるだろう。
(次ページへ続く)
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