最近のデジタルカメラで急速に普及した機能が、フレーム内の人物の顔を自動認識して焦点やホワイトバランスを調整する「顔認識」だ。最新のデジカメでは顔認識と連動する撮影支援機能を搭載し、写真を気軽に楽しみたい人にとって大きな魅力となっている。
その顔認識や関連する撮影支援機能が、2008年からはビデオカメラにも搭載されるようになった。今回はソニーから2月に発売された、顔認識機能搭載のハイビジョン(HD)ビデオカメラ「ハイビジョンハンディカム HDR-SR12」(関連記事1)を取り上げ、その詳細を見てみたい。
1/3.13型クリアビッドCMOS+映像処理回路「BIONZ」で表現力が向上
HDR-SR12は、HDビデオをHDDに記録する「AVCHD」対応のビデオカメラ「HDR-SRシリーズ」の最新モデルだ。新モデルで特に注目したいポイントは、1920×1080ドットのフルHD高解像度で撮影できる「1920×1080サポート」と、顔認識機能の搭載にある。SR12は「大容量HDD搭載の上位モデル」という位置づけで、下位モデル「HDR-SR11」とは内蔵HDDの容量のみ異なる(HDR-SR12は120GB、HDR-SR11は60GB)。
HDR-SR12のボディーデザインは、従来機種「HDR-SR7、SR8」(関連記事2)のデザインを継承する横長のスタイルで、カラーは専用色のブラック(HDR-SR11はシルバー)。ボディーサイズは83×76×138mm。手に持つと、HDD格納部がグリップとなることもあって大変扱いやすい。重量は本体のみで約570g、HDR-SR12に標準付属のバッテリー「NP-FH60」を含めた撮影状態では、約650gとなる。片手でも無理なく撮影できる重さで、長時間の撮影でも疲れは少ないだろう。
レンズは光学12倍ズーム対応で、焦点距離はf=4.9~58.8mm。アスペクト比が16:9の動画撮影時には、35mm換算でf=40~480mm相当となる。従来モデルは40~400mm相当の光学10倍ズームだったので、より遠くの被写体を狙えるようになった。入学式や運動会では被写体から離れた位置からの撮影となることが多いだけに、撮影できる範囲の拡大は嬉しい。
撮像素子には独自の画素配列によるCMOSセンサー「クリアビッドCMOSセンサー」を採用する。サイズが1/3.13インチと、従来機種の1/2.9インチよりも小型のものを採用。有効画素数は16:9の動画撮影時で381万画素、4:3の静止画撮影時では508万画素に増えるなど、従来比で約1.7倍の大幅強化が図られた。さらに、今回の撮像素子では映像品質の向上を目指し、センサーとA/Dコンバーター間の距離を短くして、ノイズの低減が図られている。
お詫びと訂正:掲載当初、「従来機種の1/2.9インチよりも大型の」と記載していましたが、正しくは「小型」でした。ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(2008年3月25日)
映像処理回路としては、従来の「エンハンスドイメージングプロセッサー」に替えて、新たに「BIONZ」(ビオンズ)を搭載した。BIONZは同社のデジタル一眼レフカメラαシリーズを皮切りに、現在ではサイバーショットシリーズにも広く搭載されるイメージプロセッサーだ。ビデオカメラの心臓部ともいえる撮像素子と映像処理回路を一新したことにより、HDR-SR12では高解像度での記録と顔認識などの新機能に対応できるようになっている。
AE(自動露出)を始めとする撮影の設定機能は、フルオートでの撮影を基本としたビデオカメラとあって、基本的にはカメラにすべてお任せだ。AE・ホワイトバランスのシフトにカメラの明るさの調整、逆光補正モード、マニュアルフォーカス対応など、最低限の調整機能はサポートしている。
また、動画と並んで重要な要素である音声では、レンズのズーム操作に応じて音量のバランスを自動調整する仕組みを新たに導入。離れた場所にいる被写体を撮影するシーンでは、被写体周辺の音を拾いやすくなった。ビデオカメラの多くはこのような音声のズームを備えないので、離れた位置にいる被写体の音を録るには別売りのズームマイクが必要であった。それだけに、この機能が標準で搭載された意味は大きい。