インターネットの登場により、既存メディアはいま転換期にある。ではメディアの古典である新聞はインターネットをどう生かすのか? それとも新聞はネットの大波に飲み込まれるのか? この連載では各新聞社のキーマンを直撃し、彼らのネット戦略や時代認識を読み解いていく。
今回は日本経済新聞社のケースを見てみよう。
日本経済新聞社は2007年1月、デジタル部門を担当していた電子メディア局を分社化し、「(株)日本経済新聞デジタルメディア」を設立した。ネット時代に対応し、デジタル分野を強化する狙いだ。
新設された日本経済新聞デジタルメディアは、ニュースサイト「NIKKEI NET」を運営するほか、会員制ビジネス情報サービス「日経テレコン21」、総合経済データベースサービス「NEEDS」を提供している。今回はこのうちNIKKEI NETを中心に話を進めよう。
アーカイブで過去の金融情報を追える
NIKKEI NETには、日本経済新聞の記者が取材し、書いた記事がセレクトされて載る。ではどんな基準で掲載する記事を選んでいるのだろうか? 日本経済新聞デジタルメディア NIKKEI NETカンパニー 編成本部 編成部部長の藤野史朗氏は言う。
「事件・事故やそのほかのいわゆる発表物は、紙の新聞より先にネットへどんどん出します。これらは現場へ取材に行っている記者から速報記事をもらい、すぐ掲載しています」
他社にも似たような記事が載る発表物は、ネットの速報性を生かして速く出す。ではこのほかネットならではの特色とは何か? 日本経済新聞デジタルメディア 執行役員の斉藤義信氏は言う。
「金融やマネー情報は速報性に加えて、過去の流れを追うのも重要です。そこでネット特有の要素となるものに、アーカイブがありますね。過去の金融/マネー情報について、データや分析がまとまって見られる。これは強みでしょう」
「個人投資家が増加する中、われわれもそれに対応していきたい。例えばうちのウェブを見てみると、内容が非常に分かりやすく、かつ今後の動きも予測できる、と。こうした部分は新聞本紙の一面だけでは表現できません。スペースも含めたネット独自の奥深さや、横への広がりを持たせた上で今後もウェブで報道して行きます」
新聞本紙では紙面に限りがある。そこで各界の大物にインタビューしたとき、本紙に載せられなかった話をウェブへ掲載するケースなどもあるという。
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