既報のとおり、マイクロソフト(株)は8日、ウェブサービス「Windows Liveサービス正式版」の提供を開始した。同日、東京都内ではWindows Liveサービスについての記者説明会が行なわれ、来日中の米マイクロソフト社CEOのスティーブ・バルマー(Steave Ballmer)氏らにより、Windows Liveサービスの概要の説明やデモの披露が行なわれた。なお、Windows Liveサービス正式版については関連記事を参照のこと。
SaaSよりもいいとこ取りの“Software+Service”をLiveで実現
マイクロソフトは常々、米グーグル社などが展開するウェブサービス(SaaS、Software as a Service)に対抗して、「Software+Service」という言葉を用いている。ウェブサービスだけでなくOSやリッチクライアントを連携させることで、より良いユーザー体験をもたらすという意味だ。Windows Liveサービスはまさにこの典型で、ウェブサービスとクライアントソフト、あるいは他のアプリケーションと連携して機能を実現している。
バルマー氏の講演も、この“Software+Service”を実現するのがWindows Liveサービスであるという観点から進められた。バルマー氏はWindows Liveサービスを称して、「Windowsと新しいコンピューティング(ウェブサービス)をつなげるもの」と定義。デスクトップ、エンタープライズ、ウェブ、デバイスという4つの点について、Windows Liveサービスがもたらすものについて語られた。
バルマー氏はまず日本のオンライン環境について触れ、世界的なブロードバンド化の流れに大きく先行していること、携帯電話のブロードバンド化も進んでいることを、「日本はポケットまでブロードバンドに」という言葉も使って賞賛した。また、ブロードバンド化の進展に加えて放送のデジタル化が進んでいる状況や、オンライン広告の広告費が増大している点などを踏まえて、「今後数年間で、あらゆる形のメディアはデジタル化する。今後数年間ですべての印刷媒体、新聞、テレビなどはIPネットワークより配信されることになる」との見解を示した。また一方で、「IPネットワークはニュース媒体ではなく、ソーシャルな活動の媒体になる」とも述べた。
「ビル!今のパットを見たかい?」
バルマー氏は自身が好きというゴルフを例に、ごく近い未来の製品のシナリオを挙げた。「テレビでタイガー・ウッズの素晴らしいパットを見たら、(テレビに向かって)『ビル!あの素晴らしいパットを見たかい?』と語りかける。するとテレビは私の声を認識し、『ビル』が『ビル・ゲイツ』であると認識する。ビルが世界のどこにいても見つけ出してくれて、『タイガーの今のパットを見たか?』というメッセージとリンクを送る。(リンクをクリックすると)ビルが私の見た画面をすぐに見ることができる」。バルマー氏は、これらのシナリオの個々の部分は、個別のサービスで実現されているものもあるとして、日本でも今後、このようなサービスが実現されていくだろうと述べた。
Windows Liveサービスが実際に実現している“Software+Service”の実例も簡単に紹介された。“デスクトップ”の面ではWindows Vistaとの連携、“エンタープライズ”の面では強固なセキュリティーが挙げられた。特にセキュリティーに関しては、「医療情報などは(コンシューマー向けサービスであっても)エンタープライズ並みの保護が必要である」と述べている。また“ウェブ”の面では、すべてがウェブサービスで実現されるというSaaSの考え方に対しては、「多くがウェブの恩恵を受けるが、“いいとこ取り”が重要である」と述べ、ウェブサービスだけで実現しようとするよりも、クライアントOSやアプリケーションの利点も組み合わせることがユーザー体験を高めるとしている。
Windows MobileとWindows Liveの連携で
スマートフォンがより便利に
デモで披露されたWindows Liveサービスの利点のひとつが、“デバイス”の面で挙げられたWindows Mobileとの連携であった。最新の「Windows Mobile 6」では、標準でWindows Liveサービスとの統合が図られている。デモではWindows Mobile 6搭載スマートフォンを使い、パソコンから同期した連絡先情報を使って、連絡を取りたい相手にWindows Live メールやWindows Live Messngerを送ったり、音声通話を行なうなど、さまざまなコミュニケーション手段を選択できるという様子が披露された。
また、パートナー企業との協業については、Windows Live Messngerを軸としたエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)(NTTコム)との提携も発表された。「Windows Live Call」というアプリケーションを使用し、Windows Live Messngerに登録された連絡先に対して、NTTコムのVoIPサービスでパソコンから固定電話や携帯電話、国際電話をかけられるというものである。ほかにも、日本電気(株)の次の春モデル新製品パソコンでは、Windows Live Messngerがプレインストールされるなど、パートナーとの協業も拡大される。
最後にバルマー氏は、Windows Liveの登場で「次世代のウェブサービス、モバイルサービスが市場に展開される」と述べ、Windows Liveが今後のWindowsとSoftware+Serviceの方向性を示していくとした。
また、質疑応答でウェブサービスの分野で先手を打ったサービス展開を行なう米グーグル社に対しては、「グーグルが先行しているのは検索だけ。検索以外では我々が先行している」と強気なコメントをした。同様に、グーグルの携帯電話向けプラットフォーム「Android」(関連記事2)についても、「まだ紙の上の言葉にすぎない。オープン化はWindows Mobileでうまくやっており、150以上のデバイス、100を超える事業者がある」と、実績の違いを挙げて自信を示した。