入出力一体型TUIプロトタイプ
物理的な実体を備え、直接触れて操作できるデジタル情報──前回はこの「タンジブル・ビット」の基本定義と特徴を紹介したが、今回からは具体的なデザイン例を順次紹介したい。
「Tangible User Interface(TUI、タンジブル・ユーザー・インターフェース)」の基本コンセプトの有効性を実証するとともに、そのデザイン原則と適用領域を見極めるため、我々MITメディア・ラボのタンジブル・メディア・グループは、'96年から多様なTUIプロトタイプを発表してきた。その中から、まずは最も純粋なタンジブルと呼べる入出力一体型TUIを2つご覧いただこう。入力と出力とが完全に一体化しており、人に力覚情報を提示するフォース・ディスプレー技術によって、実際の動きを表現出力に用いている。直接触れることのできない「インタンジブル」な表現はなく、すべてがタンジブルな物理的媒体のみで成り立っている点が「純粋なTUI」たるゆえんだ。
これらのTUIは、概念的には本連載の第1回目で紹介したそろばんに近い(参考記事)。そろばんは、十進数という情報を珠の位置関係で物理的に表現する。10本の指でその珠に直接触れ、情報を操作・計算する。そこには、入力と出力の境界は存在しない。情報表現と操作手段が密に結合した物理的インターフェースの明快さ、直接性がそろばんの特徴である。
今回紹介する入出力一体型TUIはこのそろばんの特徴に、デジタル情報の表示手段としてフォース・ディスプレーを加味し、ビット(デジタル情報)をアトム(物理的世界)の着物でつつみ込んだことに特徴がある。
(次ページに続く)
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