JR池袋駅東口から街に出て、左に折れ、歩道の人混みをかき分けなら進んでいくと、やけに明るいジャケットを羽織った老紳士にぶつかった。
選挙運動中の某候補者だった。まわりの喧騒で気が付かなかったのだが、派手なテーマソングを流す宣伝カーも付いてきている。ミーハーな筆者は、その候補者と握手をかわして先を急ぐことにする。今日の目的地は、先週末(13日)にオープンした“ヤマダ電機LABI 池袋店”だからだ。
池袋の混沌に足を踏み入れる3人の編集者
パソコン店、大手量販店の勢力分布図を観察することが、私の隠れた趣味のひとつである。
毎月愛読している雑誌に『IT&家電ビジネス』(リック刊)も含まれている。これは会社の資料室に置いてあるわけではなく、ポケットマネーで個人的に講読している業界誌だ。この雑誌が、ここのところ連続的に特集やら特別レポートやらで取り上げているのが、ほかでもないヤマダ電機。7月号でもヤマダ電機が巻き起こした超大型店ブームを分析している。
ヤマダ電機の池袋進出については、すでに新聞やテレビで多く報じられている。さまざまな見方があると思うが、この立地、実際に目の前にして見るとすごい。なにしろ、ビックカメラの本拠地である池袋。しかも池袋本店の並びで、ビックパソコン館 池袋本店の真向かいにある。
全国に約300店舗(グループ合計約350店)を数え、全都道府県を制覇したヤマダ電機。巨大化した果てに、都市生息型のビックカメラの首元にガブリとかみついたのである。
編集部のQくん、池袋に行くならとついてきたNくん、そして私の3名はもみくちゃにされながら、道を急ぐ。もともと狭い歩道に、開店セール目当ての買い物客がどっと押し寄せ、野次馬にもみくちゃにされる参院選候補者までいる。人混みの濁流にのまれていく私たち。
「われわれは負ける気がしません」とビック
四苦八苦しながら、ビックカメラ本店の前に到達する。“貯金箱にも鉛筆立てにもなる缶詰”を配りながら、店員が「われわれは負ける気がしません」などと叫んでいる! 「血で血を洗う戦いの初戦に投じてきた弾が鉛筆立てか?」など思っているうちに、本当に隣だからLABI池袋店にもたどりついた。
LABI池袋店の売り場面積は、約3500平方メートル。同社の躍進を支えてきた超大型店に匹敵する広さではないが、800平方メートルもあれば家電売り場は十分というのが業界の常識だそうだ。これに、パソコンやゲーム、玩具、AV機器、美容・健康器具などでフロア構成される。店名の“LABI”は“Life ABIlity suply”の意味だそうで、都市型店舗に統一して付けられている。
大手量販研究家の楽しみは、まずは、郊外型か駅前型か、駅前型ならヨドバシのような自社ビル主義か、ビックのような賃貸主義か、雨の日も駅から濡れずに行けるか? 周辺の人の流れはどう変わるか? など、なにしろリアルに“シム店舗立地”とも“スタークラフト for JR駅前”とも言えるゲームが楽しめる。
入り口で取材対応する、代理店の方に“取材”と書いた腕章をもらい、あとからきたお客に背中を押されるような感じで入店する。大手量販なんて、どこも似たり寄ったりだと思っている方もおられるかもしれないが、入ってみると、ヤマダの特徴がそのまま打ち出されていて驚いた。
- 店舗の目立つところにあるポイントマシーン
- 巨大店内図や床に貼られた案内矢印
- パソコンやデジタル家電の相談コーナー
- TV通販の連動コーナー
都市型量販で育った人たちが、いちばん驚くのはポイントマシーンだろう。ヨドバシでもビックカメラでも、買い物すればポイントがもらえるわけだが、ヤマダ電機では、
来店しただけでポイントがもらえる!
のである。実は、ポイントマシーンはTV画面式のスロットマシーンになっていて、期間限定ではあるが100~4000ポイント(1ポインと=1円の価値がある)が当たる仕組みになっているのだ。当然のことながら、これには1ヵ月何回までなどの制限もあったと記憶している(間違いを書くと大変なので具体的には直接問い合わせてほしい)。