ここ何回かにかけて“Enterprise 2.0”――企業内におけるWeb 2.0系ソフトウェアの活用について書いてきている。
最近では、媒体によっては同様のコンセプトを表すのに“企業内Web 2.0”というそのまんまの名称を使うケースもあるようだ。定義があいまいになりがちなEnterprise 2.0という言い回しよりも、単刀直入な企業内Web 2.0という言い方の方が誤解が少ないかもしれない。
世界の経営者のWeb 2.0度を読み解く
名称の話はさておき、企業内におけるWeb 2.0系テクノロジーの活用に関する興味深い調査レポート“Serious business Web 2.0 goes corporate”が出ているので、今回はその内容を簡単にご紹介しよう。
著名な経済誌『The Economist』の調査部門であるEcomist Intelligence Unitが、サーチエンジンの大手FAST Search & Transfer社の協力により作成したものだ。ウェブから無料でダウンロード可能になっている(英文PDF)。
調査は、世界406社の大手企業の経営者に対して、行なわれたものである。回答者のおよそ40%は“CxO”(Chief ~~ Officer)レベルである。業種は金融、プロフェッショナルサービス、IT関係、メディアなどなどさまざまであり、欧米だけではなくアジア圏も含まれている。
オンライン調査と追加インタビューという形式で調査されたことから、企業のサンプルは母集団と比較してテクノロジーに対して積極的な側にぶれているのではないかと推定されるが、それでも現時点における一般企業のWeb 2.0に対する考え方を知る上では重要な手がかりになるだろう。
思ったよりも企業内に浸透しているWeb 2.0
回答企業の約80パーセントが、ウェブをプラットフォームとして活用することで企業の収益や利益を増大できると考えている。さらに、約30パーセントの企業が、企業のほぼすべてのオペレーションに影響を与えると考えている。
実際のテクノロジーの活用率を見ても、例えば、企業の約3分の1がブログやWikiをすでに社内で活用しており、さらに3分の1が2年以内に展開予定であるとしている。展開予定がないと答えた企業は少数派であるということだ。また、マッシュアップについては、利用中が22パーセント、2年以内に利用予定が42パーセント、RSSについては利用中が21パーセント、2年以内に利用予定が34パーセントと、いずれも利用中/利用予定が過半数を越えている。
もうひとつの興味深い点は、トップマネージメント(典型的にはCEO)は、Web 2.0の可能性について、中間管理職層よりも積極的な見方をしている点だ (ただし、トップ・マネージメントの中でもCFOはあまり積極的ではないようだ)。
Web 2.0的な考え方で、従業員や顧客が自由に情報交換をするということは、中間管理職にとって、何らかの脅威とみなされるのかもしれない。企業内でWeb 2.0をうまく活用するためのポイントは中間管理職層に対してどのようなメリットを訴求できるかにあるかもしれない。
この連載の記事
-
最終回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(9)――多様な領域に広がるサーチの可能性 -
第18回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(8)――「意図のデータベース」 -
第17回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(7)――バーチカルサーチの可能性 -
第16回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(6)――真の意味のマルチメディアサーチの可能性 -
第15回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(5)――サーチとBIとのもうひとつの関係 -
第14回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(4)――結構親密なサーチとBIの関係 -
第13回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(3)――柔軟性が求められるランキングアルゴリズムの実装 -
第12回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(2)――ポータルとしてのサーチ -
第11回
トピックス
エンタープライズサーチの真の価値を探る(1) -
第10回
トピックス
いまあえてWeb 2.0を分析する(10)――企業内Web 2.0と切っても切れないエンタープライズサーチ -
第9回
トピックス
いまあえてWeb 2.0を分析する(9)――Web 2.0系テクノロジーはどこが優れているのか? - この連載の一覧へ