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アスキースマホ総研・白書 第58回

プロカメラマンが教えるiPhoneカメラの正しい使い方 (1/3)

2017年11月01日 17時00分更新

文● 南田ゴウ/ASCII編集部 作例・コメント●岡田清孝

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 今どきは、コンパクトデジカメ(コンデジ)ではなく、いつも持ち歩いているiPhoneを使ってスナップ撮影するのが当たり前だ。解像度1200万画素と、1800~2000万画素クラスが多い普及価格帯のコンデジより画素数は少ないものの、大判のプリントで比較しない限りは画素数に不満を覚えることはないだろう。また、操作系もディスプレーのタップやスワイプと、コンデジと比較すると直感的に扱えるのもメリットのひとつだ。

iPhoneなどのスマホは基本的にディスプレーをタッチして撮影操作を行なう

被写体をタッチして撮影がiPhone撮影の基本

 ただし、コンデジ代わりにiPhoneをメインカメラとして使うことを考えると、先述のとおり操作系が異なるだけでなく、撮影機材としての仕様にも違いがある。

 iPhoneとコンデジとのいちばん大きな違いは、光学ズームがないことだ。デュアルレンズのiPhone 8 Plusは光学2倍の望遠撮影が可能だが、望遠と広角側は切り替え式。2倍以上の倍率で撮影したい場合は、多少画質は落ちるもののデジタルズームとなる。

iPhoneとコンデジの画角の違いを確認する

 iPhone 8 Plusの画角は広角側が35mm換算で29mm相当、光学2倍の望遠側が59mm相当。切り替え式の光学2倍なので光学10倍超が標準のコンデジに比べると画角の幅は狭い。まず作例比較に利用したソニーの光学20倍ズームコンパクトデジカメ「DSC-WX350」とのスペックを確認してみよう。

  iPhone 8 Plus DSC-WX350
静止画記録サイズ 4032×3024ピクセル 4896×3672ピクセル(4:3)
カメラ (リア)12メガ×2
/F値1.8、2.8
(イン)700メガ/F値2.2
18.2メガ
/F値3.5~6.5
焦点距離 29mm/59mm 25mm~500mm(静止画4:3)
ISO感度 自動/20~2000相当
(編集部測定値)
80~3200相当
光学式手ぶれ補正
(iPhone 8 Plusは広角側)

 iPhone 8 Plusはインカメラの有無はあるものの、リアカメラがデュアルレンズで広角(標準)と光学2倍の切り替え式なのが大きな違い。対するDSC-WX350は光学20倍ズームだ。どちらも光学式手ぶれ補正に対応するが、iPhone 8 Plusは広角側のみが対応する。次に、両者の画角の差をチェックしていこう。

【iPhone 8 Plusの画角】

 iPhoneの標準、光学2倍、デジタルズーム5倍、デジタルズーム10倍の画角の作例。デジタルズーム10倍ではさすがにざらつきが目立つが、拡大しなければ十分きれいだ。

標準29mm相当(F値1.8、焦点距離29mm、シャッタースピード1/2288秒、ISO相当感度20)

望遠59mm相当(F値2.8、焦点距離59mm、シャッタースピード1/774秒、ISO相当感度20)

デジタルズーム145mm相当(F値2.8、焦点距離145mm、シャッタースピード1/774秒、ISO相当感度20)

デジタルズーム287mm相当(F値2.8、焦点距離287mm、シャッタースピード1/592秒、ISO相当感度20)

【コンパクトデジカメ(ソニーDSC-WX350)の画角】

 光学20倍ズームのソニー製コンパクトデジカメ「DSC-WX350」の画角。高い光学ズーム倍率が利点だ。

25mm相当(F値3.5、シャッタースピード1/1000秒、ISO相当感度80)

27.3mm相当(F値3.5、シャッタースピード1/1000秒、ISO相当感度80)

57mm相当(F値4.5、シャッタースピード1/640秒、ISO相当感度80)

142mm相当(F値5.6、シャッタースピード1/400秒、ISO相当感度80)

288mm相当(F値6.3、シャッタースピード1/250秒、ISO相当感度80)

500mm相当(F値6.5、シャッタースピード1/250秒、ISO相当感度100)

 上記の作例のようにiPhoneとコンデジの画角には差があるものの、iPhoneはデジタルズームが優秀なので気軽にデジタルズームを活用して撮影してもいいだろう。画面タッチだけで完結する操作系も直感的で扱いやすく、一般的な用途ではふつうにコンデジ代わりに使える。

 このほか、iPhone標準のカメラアプリでは基本的に撮影設定はオートで、コンデジのように色調や感度、ホワイトバランスなどを手動で設定することができない。ただし、iPhoneのカメラ機能はあまり細かい設定はできないものの、カメラまかせで撮影してもiPhoneの写真は、プロカメラマンから見ても十分キレイだ。

 ちなみにiPhone 6sシリーズ以降では、iOS 11にアップデートすると静止画の標準フォーマットがJPEGからHEIFに、動画はH.264からHEVC(H.265)に変更された。どちらも容量効率が高く、HEIF形式で保存した写真をシェアしたりする際にはiPhone側でJPEG形式に変換するため意識せずに新フォーマットを活用できる。ただし、NASやレコーダーなどさまざまな機器で画像を見たい場合は、カメラ設定を開いて“フォーマット”→“互換性優先”に設定し、従来のJPEGやH.264形式で撮影するのがオススメだ。

カメラ設定の“フォーマット”→カメラ撮影項目を互換性優先に設定。今回の特集の作例は、すべて互換性優先設定で撮影している

 ふだん何気なくスナップ撮影しているさらにiPhoneの写真をキレイに見せたいなら、撮影時に構図や露出などをひと工夫するだけで、カンタンにワンランク上の仕上がりになる。次ページからは作例ごとに細かく見ていこう。

撮影シーンに合わせて明るさを変えてみよう

 iPhoneで撮影する際は、基本的に撮りたい場所をタッチするとピントと明るさを自動的に合わせてくれる。基本はこれでOKだ。ただし、明暗差の激しい場所ではタッチする場所で極端に明るさが変わってしまうので、明るさを合わせたい部分をタッチして長押しすることで、明るさを固定(AEロック)できる。

【AEロックを活用した作例】

明るい窓の外にAEロックした場合。外がキレイに見えている反面、暗い室内がつぶれている

逆に室内の暗部にAEロックすると、建物の柱や室内のディテールがよく見える

露出を変えると写真の明るさが大きく変化する

 撮影時に明るさを変えることで写真の印象は大きく変化する。意図的に明るさを変えたい場合は、画面をタッチすると現われる選択枠の横に出るバーを上下にスライドすることで、明るさ(露出)を変えられる。

 なお、iPhone 8の場合、露出を変えて撮影した複数枚の画像を合成することで白飛びや黒つぶれを抑えるHDR(ハイダイナミックレンジ)が標準でオンになっている。極端にオーバーに撮影したい場合は、HDR設定をオフにしよう。なお、7以前のシリーズではカメラアプリからHDRをオフにできるが、iPhone 8シリーズの場合は設定の“カメラ”→“自動HDR”をオフにする。

設定の“カメラ”→“自動HDR”をオフにする

露出補正なしの場合

露出オーバー(左画像)と露出アンダー(右画像)の例。かなり印象が変わることがわかる

 撮影時にわざと露出をオーバーさせることを“ハイキー”という。極端に露出オーバーにすると幻想的な雰囲気になる。逆に、露出をアンダーにすることを“ローキー”という。極端に露出アンダーにすると暗部がつぶれ、よりメリハリのある写真になる。

【意図的にハイキーにした作例】

標準(F値1.8、焦点距離29mm、露出補正0ステップ、シャッタースピード1/316秒、ISO相当感度20)

ハイキー(F値1.8、焦点距離29mm、露出補正+3ステップ、シャッタースピード1/120秒、ISO相当感度64)

【意図的にローキーにした作例】

標準(F値2.8、焦点距離57mm、露出補正0ステップ、シャッタースピード1/60秒、ISO相当感度32)

ローキー(F値2.8、焦点距離57mm、露出補正-2.5ステップ、シャッタースピード1/216秒、ISO相当感度20)

SNS映えを狙ってハイキーで撮影してみよう

 ハイキー撮影では色が淡くなるので。ポップでポスターっぽい仕上がりになる。印象的な写真の仕上がりを狙ってみよう。

(F値1.8、焦点距離84mm、露出補正+2.4ステップ、シャッタースピード1/120秒、ISO相当感度32)

(F値2.8、焦点距離77mm、露出補正+3.4ステップ、シャッタースピード1/99秒、ISO相当感度32)

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