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アスキースマホ総研・白書第36回

格安スマホがなんで安いかがわかった!

2017年05月11日 12時00分更新

文● 島徹 編集●ASCII編集部

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 格安SIMまたは格安スマホと呼ばれる、月々の支払いが1000円前後のサービスが注目を集めている。テレビCMのほか、量販店や街のスマホショップでもよく見るようになり、すでに使っている方はもちろん、キャリアからの乗り換えを検討している方も多いはず。

 しかし、格安SIMはその安さもあって「契約してだいじょうぶか」「サービス内容は問題ないか」といった疑問も浮かんでくる。そして、そのような疑問に関して家族や友人から尋ねられることも多いはずだ。

 今回の特集では、格安SIMで気になる基本的な疑問から楽天モバイルやLINEモバイルなど他業種が格安スマホに参入する理由、格安SIM事業者とSIMフリースマホの関係など、サービス各社への質問の回答も含めて解説していく。

そもそも、格安SIMはなぜ安いのか?

 格安SIMが安い理由は「大手携帯電話会社のネットワークを借りている」「過剰なサービスやサポートは提供しない」という2つの理由がある。

 現在、ドコモやau、ソフトバンクは全国の人口カバー率99%以上のエリアを構築し、下り最大100Mbpsを超える高速LTEネットワークを構築している。そして、各社ともこの携帯電話網を構築するために毎年数千億円単位の設備投資を行なっている。新たに携帯電話サービスを提供するのは、周波数の割り当てという問題のほか投資額の面でも一般の企業単独ではかなり高いハードルがある。

本来、人口カバー率99%以上の携帯電話網を構築するには1兆円を超える投資が必要だ。格安SIMはMVNOとしてこの携帯電話網を借りることで安く提供している

 しかし、総務省が2007年に改訂した「MVNO事業化ガイドライン」により、ドコモやau、ソフトバンクは他の企業が携帯電話網や設備を借りて携帯電話サービスを提供するMVNO事業の開始について貸し出しの要請があった場合、正当な理由が無い限り拒否できないという取り決めができた。

 これにより、一般企業でも携帯電話網を卸金額で借りるMVNO(仮想移動体通信事業者)という形で、ゼロから設備投資をしなくても全国人口カバー率99%以上の携帯電話サービスを提供できる道が開かれることになった。

「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」より抜粋。ドコモ、KDDI、ソフトバンクはMVNOに対して基本的には設備を貸し出す義務を負っている

 一般企業もMVNOとして携帯電話サービスを提供できるようになったが、ドコモやau、ソフトバンクと同じサービスでは利用者の支持を得られない。一方で、スマホ利用者の中には必ずしも100Mbpsを超えるような高速通信や、全国津々浦々の店舗による手厚いサービスは必要ないので、そのぶん安く使いたいという要望もある。

 こうした経緯から、現在のMVNO事業者の多くは通信速度はやや遅くサポートも少ないが、その代わりに圧倒的に安い“格安SIM”を提供、人気を集めて現在多くのユーザーが利用している。

 ここまでカンタンに格安SIMの成り立ちを説明したが、では「格安SIMの通信速度ってどうやって決めているのか」「格安SIMのサポートってどこまでやってくれるのか」などの新たな疑問が出てくる。次に、これらの疑問について各社に問い合わせた内容を含めて解説していこう。

格安スマホは通信速度はどうやって決まっているのか

 格安SIMはドコモやau、ソフトバンクのいずれかの携帯電話網を卸価格で借りて、通信速度を抑えることで安い月額料金を実現している。では、格安SIMの通信速度はどのように決まっているのだろうか。

 多くの格安SIMの通信速度は、ドコモなどから借りた携帯電話網の設備を、どれだけの格安SIM契約者で共有するのかによって決まってくる。格安SIMの契約者は月々1000円~と安い料金で契約しているため、あまり多くの設備を借りると高速にはなるものの、赤字となり格安SIM事業を継続できなくなる。一方、借りる設備が少なすぎると混雑のため通信がつながりにくくなる。

ドコモなどは格安SIMなどMVNO事業者に貸しだす携帯電話網の設備の卸価格を公表している

 実際の格安SIMの通信速度は、格安SIMの事業者にもよるが日中や夜間の混雑時は10Mbps以下~1Mbps程度。利用者の少ない深夜などは10Mbps以上といった範囲で利用できる事業者が大半だ。各社とも、メールやSNS、ウェブサイトの閲覧なら問題なく利用できる数Mbpsという速度を、月々1000円前後からの低価格でいかに保つかを努力や工夫のポイントとしている。

混雑する夜間帯は3Mbps前後になることも(IIJmioの回線をRBB TODAYのアプリで計測)

 とはいえ、通信速度が極端に遅くなる要因はいくつかある。ひとつは、平日昼間12時台などスマホの利用が集中する時間帯だ。この時間帯は他の時間帯と比べて通信の利用があまりにも多いため、格安SIMによっては通信速度が1Mbps以下になるなど極端に遅くなりがちだ。

IIJmio meeting 9の資料より、時間や曜日別のトラフィックの例

 格安SIMの加入者の増加でも通信速度が遅くなることがある。これは、加入者の増え方に対して借りている携帯電話網や設備の増強が追いついていない場合に発生する。格安SIMは利用者が毎日のように増えているため、利用者の増加に合わせてドコモなどから借りている通信網や設備を順次増強していく必要がある。

 これらの問題について格安SIM事業者に質問したところ、以下の回答を得られた。

■楽天モバイル:「3ヵ月先までの新規加入者をデイリー単位で予測して増強しています。また、通信速度も一定の速度目標を下回らないよう適宜増速しています」
■mineo:「平日の昼休みの混雑時に1Mbps、夕方の混雑時に3Mbpsを目安として、月に3回程度の増強計画を立てています。また、毎月ブログでトラフィック状況とネットワーク増強の報告をしています」
■LINEモバイル:「日々の通信速度をモニタリングして、月に2~3回以上の増速工事を行なっています」

 格安SIM事業者の多くは、特に毎月の増速については短期的に実施しており、増速時期を公表しているところも多い。mineoのように速度目安や実際の速度を公表しているところは少ないが、こういった公開情報があると安心して契約しやすいと言える。

mineoは実際のネットワーク状況をブログで公開している

 ちなみに、格安SIMの事業者の多くはドコモの回線を借りてサービスを提供している。理由としては、3社のうち携帯電話網の設備を借りる卸価格がもっとも安いのと、MVNOに貸し出す実績の多さなどがある。

 ほかにもmineoやIIJmioのように、auの回線も借りている事業者もある。au回線を利用したプランは、auのスマホをそのまま流用しやすいという利点がある。同様に、最近ではU-mobileなどがソフトバンク回線を利用したサービスを開始している。

mineoはドコモ回線とKDDI(au)回線両方のプランを提供している

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